雨が上がり雲がたな引く山々を背景に咲き誇るミツマタの花=那賀町沢谷

 神山町から国道193号を通って那賀町に向かう。両町境にある土須峠を越えた辺りで濃い霧に覆われた。10メートルほどしかない視界の中、白い花がぽつぽつと見え始める。ミツマタの花だ。

 

 県道徳島上那賀線近くの林道沿いに群生地がある。地元の林業家が植え、数百本の木で埋め尽くされている。見頃は3月中旬から4月上旬にかけて。毎年のように訪れているが、開花時期のずれがほとんどない。気候に左右されないのだろうか。寒い日が続いて周囲に雪が残っている年でも、遅れず咲いていた。

 那賀町内では栽培が盛んだ。2000年ごろから、シカが樹木の皮を食い荒らす被害が目立ち始めた一方、ミツマタが食害を受けずに育っていることに着目した。林業団体や住民有志が各地で植えている。 ミツマタは、樹皮から和紙が作られる。紙幣の原料になっているのは、多くの人が知っているだろう。枝が三つに分かれており、その名が付いたとされている。

 群生地にしばらくいると、霧が晴れだした。雲がたなびく山々を背景に、小さなぼんぼりのような花が浮かび上がり、ひときわ輝いて見えた。