旧優生保護法(1948~96年)下で障害者らに不妊手術が繰り返されていた問題で、与党の合同ワーキングチーム(WT)と野党を含む超党派の議員連盟が救済法案をまとめた。

 被害者へのおわびや、1人当たり320万円の一時金を支給することなどを柱としている。来月初旬に国会に提出し、月内の成立、施行を目指すという。

 この問題を巡っては、全国7地裁で国家賠償請求訴訟が係争中だ。被害者の多くが高齢であることに配慮し、司法判断を待たず法制化しようという積極的な姿勢は評価できよう。

 とはいえ、肝心の法案の中身は被害者の求めるものと大きく懸け離れている。

 国賠訴訟の原告が強く求めているのは、国による謝罪と旧法の違憲性の確認である。しかし、今回取りまとめた法案では違憲性について全く言及していない。

 「反省とおわび」は記してはいるものの、主語を「われわれ」とした。責任を社会全体に負わせ、ぼやかそうとしているように映る。

 憲法で定められた基本的人権を踏みにじる差別を、国が進めたことは紛れもない事実である。そう考えると、法案の内容は誠実さに欠けていると言わざるを得ない。

 全国被害者弁護団の「旧法が違憲かどうか、間違っていたかどうかをはっきりさせなければ、反省につながらない」という主張はもっともである。国の過ちと責任は明記すべきだ。

 一時金を320万円としているのは、日本と同様に不妊手術を強制したスウェーデンが、1990年代に救済名目で支給した額を参考にしたという。しかし、国賠訴訟における原告の請求額は最大3千万円であり、隔たりが大きすぎる。

 国の隔離政策で不当な差別や偏見を受けたとして、ハンセン病の元患者らに支払われた補償金の最大1400万円と比べても低い。

 支給対象を被害者本人に限ったのも疑問である。ハンセン病補償法が配偶者や遺族への補償を認めたのに、なぜそうしたのか。

 国賠訴訟で最も審理が早く進んだ仙台地裁では、5月28日に判決が予定されている。この際、同地裁の判決内容を見てから、法案を見直すべきである。

 被害者の思いを受け止め、寄り添う姿勢がなければ、被害者にとっての真の救済につながらない。

 厚生労働省の統計では、被害者は2万5千人いて、うち1万6500人は本人の同意なしに強制されたとされる。徳島では少なくとも391人が同意なき手術を強いられたとみられる。

 被害者の実態は十分把握されているわけではない。救済の網から漏れることがないよう、プライバシーに配慮しつつ、被害者の掘り起こしを進めることも必要だ。