新しい年が明けた。

 まさか、よもやの出来事の連続だった昨年に続いて、世界は混迷を深めていくのか。それとも出口を見いだせるのか。

 警戒しなければならないのは、ポピュリズム(大衆迎合政治)の拡散だろう。

 その典型的な指導者とされるのが、20日に米大統領に就任するトランプ氏であり、世界の目は、彼の動向に集まっている。

 止まらない暴言に眉をひそめる人は多かったが、経済や社会のグローバル化に不満を持つ有権者の支持はより大きかった。貧富の格差是正や移民流入の問題で、いかなる政策をどのように進めるのか。

 トランプ氏には危うさがつきまとう。既に大統領就任日に、環太平洋連携協定(TPP)脱退を通告すると公言している。通商協定の目的を、オバマ現政権の輸出拡大から、国内産業保護へと転換する方針だ。巨額減税を行い、雇用維持には奇策をいとわない。

 「米国第一」「米国を再び偉大にする」と繰り返し、自国の利益を優先するトランプ政権に日本はどう向き合うのか。

 在日米軍駐留経費の負担増を求めるなど、あらゆる面で国益を押し通してくるかもしれない。これまで、価値観を共有してきた米国との同盟関係が変容する懸念がある。日本は、自らの立場をしっかりと主張していかなければならない。

 世界の平和と安定に、超大国としての役割を果たしてもらいたいが、トランプ氏は核戦力を大幅に強化する考えも示した。「核兵器なき世界」を掲げるオバマ氏との違いが鮮明になっており、予断を許さない。

 欧州でもまた、ポピュリズムの風が吹き荒れるのだろうか。

 フランスやドイツなどで国政選挙が相次ぐ「選挙イヤー」であり、いずれもポピュリズム的な動きが急速に勢いづいている。昨年、英国が国民投票で欧州連合(EU)からの離脱を決めて以降、既存の政治や難民の流入に反対する勢力が拡大している状況だ。

 ポピュリズムや排外主義は、民族や宗教の対立に火を付ける恐れがある。テロ対策で大きな役割を担う米欧が「政治リスク」となることに不安を抱かざるを得ない。予期しない事態が次々と起きる時代を乗り越えていくためにも、連携や協力が強く求められる。

 世界が混迷の度を増せば日本への影響も避けられない。

◎丁寧な議論求められる

 安倍晋三首相は第1次内閣から通算で在職日数が戦後4位になった。第2次内閣発足から丸4年が過ぎたが、外交、経済、社会保障などの状況は、好転したとは言えない。

 重要なのは丁寧な議論を続け、深めていくことだ。昨年の臨時国会では、カジノを中心とする統合型リゾート施設(IR)整備推進法などの成立を急いだ。拙速ともいえる議論の中に「1強」政権のおごりが見える。

 安全保障関連法の成立から1年余りが過ぎたが、国民の理解は得られていない。過重な基地負担に苦しむ沖縄との溝も埋められないまま、また年を越した。沖縄の民意に寄り添い、耳を傾けているとは思えない。

 大都市と地方の格差や子どもの貧困などへの関心も低いのではないか。経済成長やグローバル化ばかりに目を向けず、弱者への対応を進めるべきだ。

 5月には、憲法施行70年の節目を迎える。首相は、在任中の憲法改正を目指している。衆参両院の憲法審査会では実質的な審議が再開された。議論は大いに結構だが、「改憲ありき」の姿勢は断じて排さなければならない。

 天皇陛下の退位を巡っては、多様な意見がある。国民的議論が不可欠だ。

◎一人何役で地域支える

 本格的な人口減少時代を迎えて、徳島県も活路を開く未来予想図を描く時だ。

 県人口は戦後初めて75万人を割り込んだ。消滅しかねない集落の数も増えている。移住を促す施策が行われているが、肝心なのは、受け皿となる地域であり、一人一人の取り組みだ。

 高齢になりながら、一人何役もこなしている人たちの存在を忘れてはならない。そうした力が地域社会を支え、地域の可能性を広げている。

 消費者庁が県庁内に新設する政策立案拠点「消費者行政新未来創造オフィス(仮称)」が7月に稼働する予定である。オフィスでの成果などを検証し、3年後をめどに改めて全面移転の可否が判断されるという。

 玉虫色の答えに満足していては、東京一極集中の是正など到底できまい。

 政府の掛け声は「1億総活躍社会」が大きくなり、地方創生は次第に小さくなった感が否めない。サテライトオフィスや、仕事と暮らしを充実させる「半X半IT」といったモデルが、地方を励ます力にもなっている。徳島から持続可能なビジョンや新しい働き方を示していくことが大事だ。

 県内では、首長選が11市町、議員選は4市町で行われる。地域をどう発展させるのか。有権者の見る目が問われよう。

 防災対策も、まだこれからである。昭和南海地震から70年が過ぎたが、南海トラフ巨大地震への備えをさらに強めていく必要がある。災害の規模が大きくなれば、行政による公助が機能しにくくなるのは間違いない。自助と、地域連携による共助が何よりも大切になってくる。

 未来の世代へ、重い責任がある。誰もが暮らしやすく、生きやすい県土づくりに向け、私たちの知恵が試されている。