高齢化の急速な進展で、医療、介護、年金などの社会保障費は増え続ける一方だ。

 その伸びを抑えるため、政府は昨年末、高齢者の負担増を中心とした社会保障制度の見直しを決めた。

 国と地方の借金が1千兆円を超える危機的な財政状況を考えれば、支払い能力に応じて負担を求めるのはやむを得ない面もあろう。

 だが、小手先の見直しで帳尻を合わせるだけでは、いずれ行き詰まるのではないか。抜本的な改革が求められる。

 医療で負担が増えるのは、自己負担に限度を設ける「高額療養費制度」だ。一定の所得のある70歳以上の人の上限額を、8月から引き上げる。

 75歳以上の後期高齢者医療制度でも、所得が低い人や、夫らに扶養されていた人の保険料を軽減する特例を、4月から段階的に縮小する。

 介護保険では、現役並みの所得がある人を対象に、利用時の自己負担を18年8月から、現在の2割から3割に上げる。40~64歳が納める保険料は、収入に応じた「総報酬割」を導入し、大企業社員の負担を増やすことにした。

 一方、年金の受給資格が得られる加入期間を25年から10年に短縮し、無年金者の一部が救済されることになったのは前進だろう。

 しかし、18年度から支給額の抑制を強化し、21年度以降は毎年度の改定ルールを見直す。世代間の公平性を保つ狙いがあるとはいえ、高齢者の不安は尽きない。

 社会保障費は国の17年度予算案で32兆4千億円超と、歳出全体の3分の1を占める。自然増は毎年約1兆円に上るとされ、このままでは、団塊の世代が75歳以上になる25年には現在の2~3割増になると見込まれている。

 それを回避するために政府が掲げたのが、16年度からの3年間で自然増を1兆5千億円に抑える目標である。今回の見直しで、概算要求段階から1400億円を圧縮し、17年度の伸びは5千億円内に収めることができた。

 何とかやり繰りした格好だが、負担が増える人の中には、経済的に余裕のない高齢者も少なくない。そうした人たちが生活費を切り詰め、必要な治療も受けなくなれば、病気が重くなるといった弊害がある。そうなれば、かえって社会保障費が増加する事態を招きかねない。

 忘れてはならないのが、低所得者に対する配慮である。

 政府は、低年金者への最大年6万円の給付や、65歳以上の介護保険料の軽減措置拡充など、17年度に予定していた施策を見送った。「社会保障と税の一体改革」で決めた消費税増税を再延期したつけであり、低所得者対策をおろそかにしていると言えよう。

 老後の不安が消えなければ消費は増えず、税収も伸びない。将来の安心につながる社会保障は、どうあるべきなのか。政府と国会は、持続可能な制度に向けた議論を始めなければならない。