「核兵器なき世界」をどう実現するのか。国際社会の英知が試されよう。

 3月から「核兵器禁止条約」の制定交渉が始まる。核兵器の開発や実験、保有、使用などを全面禁止する条約であり、核兵器廃絶の道に大きく踏み出すものだ。

 制定交渉を巡っては、昨年8月の国連作業部会の勧告を受けて、オーストリアやメキシコなどが、交渉開始に向けた決議案を国連総会に提出し、12月に採択された。

 問題は、米国やロシアなど核保有5大国が、制定に強く反発していることである。

 米国では「核兵器なき世界」を掲げるオバマ大統領が退任し、今月20日に就任するトランプ次期大統領は逆に核兵器を増強する姿勢を示している。

 トランプ氏が具体的に何を目指すのかは分からない。だが、「米国は核戦力を大幅に強化しなければならない」とツイッターを通じて表明し、「軍拡競争をすればいい」と言い放っていることは、到底看過できない。

 理由や目的を明確にせず、ツイッターで発信するのがトランプ流だとしても、核政策は世界に重大な影響を与えるものだ。党派を超えて、歴代の米政権が取り組んできた核軍縮への努力を無にしてしまいかねない。

 それだけに、トランプ氏は説明責任を果たしてほしい。超大国のリーダーたる使命と覚悟が問われよう。

 ロシアの動きも気掛かりだ。プーチン大統領は、保有する核兵器を近代化する考えを強調している。

 北朝鮮も核開発を継続している状況であり、東アジア地域の平和と安定を脅かす恐れがある。

 核軍縮をどのように進めていくか。トランプ氏とプーチン氏は、国際社会に向けて、その範をしっかりと示し、核兵器廃絶の道を開かなければならない責務がある。

 唯一の被爆国でありながら米国の「核の傘」の下にある日本も、核保有国と非保有国の対立激化を招くなどとして、総会で反対票を投じた。

 日本の姿勢に対して、条約制定を目指す国々や被爆者から強い反発や失望の声が出たのは当然である。むしろ制定に向けた議論を主導し、「核兵器なき世界」を前進させるべきではないのか。

 広島選出の岸田文雄外相は交渉に参加する意向を示したが、日本政府内には参加を見送る意見もあるという。1~2月に予定される準備会合には参加する見通しだ。

 非政府組織(NGO)の核兵器廃絶国際キャンペーンのフィン事務局長は条約制定交渉について「唯一の被爆国の日本には豊富な知見があり、非常に重要な役割を演じられる」と述べ、交渉参加に期待感を示している。傾聴に値しよう。

 日本は、交渉に参加して条約の制定に積極的に関わっていくべきだ。国際社会も注視している。