従軍慰安婦問題の「最終的かつ不可逆的な解決」を申し合わせた2015年末の合意を、日本と韓国が誠実に履行する。

 それが、日韓関係を発展させる道であることは言うまでもない。

 ところが、残念な事態が起きた。昨年末、韓国・釜山の日本総領事館前に、市民団体が慰安婦被害を象徴する少女像を設置したのだ。

 日韓合意では、ソウルの日本大使館前に設置された少女像に関して「韓国政府は関連団体との協議を通じて適切に解決されるよう努力する」とされた。しかし、撤去の動きは進んでいない。

 さらに、釜山にも設置されたことから、日本政府は繰り返し撤去を求めてきたが、韓国政府は有効な対応を取ろうとしない。

 安倍政権は、韓国の姿勢が慰安婦問題に関する日韓合意の誠実な履行に反すると判断して、長嶺安政・駐韓大使をきのう、一時帰国させた。

 金融危機時にドルなどを融通し合う「通貨交換(スワップ)協定」の再開に向けた協議も中断する。日韓の経済協力を次官級で話し合う「日韓ハイレベル経済協議」の延期も決めた。

 韓国側の対応を踏まえれば当然の措置だろう。

 日本は、日韓合意に基づく元慰安婦支援のために韓国政府が設立した「和解・癒やし財団」に10億円を拠出した。財団は受け入れを表明した元慰安婦34人のうち31人に、現金の支給を決定し、既に大半の元慰安婦への支払いが終わっている。

 韓国も合意を履行しなければならない。

 朴槿恵(パククネ)大統領は、親友の国政介入疑惑を巡って国会の弾劾訴追を受け、国民の強い批判にさらされている。少女像問題で事態を収拾する能力を失っているのは明らかだ。

 だからといって、問題を放置してよいはずがない。

 安倍晋三首相はNHK番組で、韓国政府に、釜山の少女像の撤去を求める意向を示した。「日本は誠実に義務を実行していく。(韓国の)政権が代わろうとも実行するのが、国の信用の問題だ」とも述べた。大使館前の少女像の撤去も、「(韓国側が努力するのは)当然だ」と語った。

 韓国では、朴氏の「外交成果」である日韓合意への反発は高まるばかりだ。世論調査では、「破棄すべきだ」との回答が59%に上っている。

 次期大統領選の有力候補で、最大野党「共に民主党」の文在寅(ムンジェイン)前代表は「正当性を認め難い」と言い切った。

 今後の日韓合意の行方が気掛かりである。国と国の約束事が守られなければ、信頼関係は成り立たない。

 日本は2国間の交渉のパイプを維持し、韓国の出方を見る構えだ。韓国とは、対北朝鮮など安全保障問題で連携する必要もある。未来志向の日韓関係を築くために、解決に向けて、両国間で知恵を絞ってもらいたい。