改めて浮き彫りになったのは、保護主義と排外主義を推し進める姿勢である。

 ツイッターで情報発信を繰り返してきたトランプ次期米大統領が、20日の就任を前に記者会見した。

 昨年11月の当選後初めてで、単独の会見は約半年ぶりだ。次期米大統領がこれほど長く会見しなかったのも異例なら、中身も異様と言わざるを得ないものだった。

 トランプ氏は「最大の雇用創出者となる」と述べたが、自由貿易体制が揺らぐことになれば、世界経済の先行きが不透明になる。

 就任後も強硬な姿勢を続けるのか、それとも少しは柔軟になるのか。その動向と言動を注視しなければならない。

 冒頭、トランプ氏は米自動車大手フォード・モーターがメキシコ工場の新設計画を撤回したことを称賛した。ツイッターでの「口撃」の効果に満足しているのだろう。

 権力者がどう喝のような形で企業の経営に介入する。そんな乱暴な手法を、これからも取るということなのか。

 「米国第一」を掲げるトランプ氏は会見で、海外に生産拠点を移す企業の製品に高い関税を課すと表明した。矛先は、メキシコに新工場の建設を計画しているトヨタ自動車にも向けられている。

 だが、高い関税をかければ米国内の製品価格は上がる。高コストの国内で生産してもやはり高くなる。つけは、高い製品を買わされる米国の消費者に回るのではないか。

 政治介入が続けば市場がゆがみ、企業は米国への投資に慎重になろう。米国の競争力が損なわれ、雇用に悪影響を及ぼす恐れすらある。

 懸念されるのは、保護主義の台頭により、自由な経済活動が妨げられることだ。米国は自由で開かれた通商体制によって発展してきた。日本や欧州なども同様である。

 自由貿易体制の堅持こそが米国の利益になることを、各国はトランプ氏に粘り強く説明していく必要がある。

 トランプ氏は不法移民対策として、メキシコ国境での壁の建設を早期に行う意向も示した。荒唐無稽とも見られた政策が現実となる背景には、排外主義の高まりがある。

 トランプ氏の会見の前日、オバマ大統領は任期最後の演説で、多様性に富む社会の重要性を説いた。新旧リーダーの違いの大きさに、改めてがくぜんとする。超大国が「寛容」から「排斥」に向かう影響は計り知れない。

 会見で目立ったのは、記者団との激しい応酬である。特定の社の記者を指さして露骨に非難し、質問を受け付けなかった。

 自身に不都合な情報を伝えたことが理由のようだが、就任前とはいえ、一国の指導者となる人物にふさわしい行為とは到底思えない。

 公人になれば、一方的なツイッターでの発信だけでは、国民に対する説明責任を果たせない。トランプ氏は十分に自覚してもらいたい。