英国の歴史的な選択は果たして妥当かどうか。予断を許さない状況だ。

 メイ首相は域内での人、モノ、サービス、資本の移動の自由を原則とする欧州単一市場から脱退し、欧州連合(EU)からの完全な離脱を目指すとの意向を表明した。

 「EUとは前向きで新しい関係構築」を目指すとして、「部分的にEUのメンバーになるような中途半端なことは目指さない」と述べた。

 メイ氏が提示したのは、EU域内からの移民流入の制限や労働者の保護など12の優先事項である。

 加盟国間の関税を撤廃し、域外との貿易に共通関税を設けるEUの関税同盟に残留せず、新たにEUと貿易協定を結びたいとした。

 EU離脱を決めた昨年6月の国民投票から半年余り。移民制限を重視する考えをにおわせながらも、明確なビジョンを語ってこなかったメイ氏が今回、方向性をはっきりと示した形である。

 メイ氏は「より強く、よりグローバルな英国をつくる」と主張した。しかし、その道は平たんではあるまい。

 単一市場を含めてEUとのつながりを引き続き重視する穏健派と、単一市場からの離脱も辞さない強硬派との隔たりは大きい。

 離脱手続きを本格化させるためには、二分された世論を修復しなければならない。

 EU加盟による経済的な恩恵を受けてきた富裕層や若者らと、そうでない中低所得層や高齢者らとの断絶が顕在化しているのも問題だ。

 2014年の統計では、上位1%の富裕層の資産規模が下位層55%の資産総額に相当するという。金融都市であるロンドンなど南部が好況な半面、製造業が疲弊している中部などとの開きも目立つ。

 移民を制限し、保護主義色を強めることで、こうした格差が解消できるのかどうか。先行きは不透明である。

 心配されるのは、20日に就任するトランプ次期米大統領が英国の離脱を称賛し、欧州でも離脱を主張する政党が影響力を増しつつあることだ。

 トランプ氏への親近感を隠さない首脳もいる。欧米に広がる保護主義の動きは看過できない。各国の結束や国際協調を脅かす恐れもある。

 メイ氏は3月末までに、EUに離脱の意思を通知し、原則2年の離脱交渉に入る考えだ。離脱の緩和措置として段階的な移行期間を設けることが望ましいとしたほか、EUとの最終的な合意について上下両院の投票で承認を求めるとも述べている。

 しかし、関係国・地域の利害が対立する通商交渉は長期にわたるとの見方が強く、2年では不可能だと指摘されている。メイ氏が描いた通りにはいくまい。

 英国とEU諸国、米国などとの関係が変容すれば、世界に影響を及ぼすのは必至だ。万が一にも、分断や対立を深めるようなことがあってはならない。