長時間労働を是としてきた日本企業特有の組織文化を変革できるかどうか。政府、与党は、残業時間の上限規制を柱とした「働き方改革」関連法案を今国会で成立させる方針だ。

 焦点は、労使合意があれば事実上無制限に残業ができる現在の法制度を見直し、残業規制と罰則強化でどこまで実効性のある対策を打ち出せるかである。国会答弁で法案の早期提出に向けて作業を加速させると強調した安倍晋三首相の実行力が問われよう。

 広告最大手電通の新入社員が長時間労働の末に自殺した問題は、労働基準法違反事件に発展し、会社と幹部1人が書類送検された後も捜査は続いている。

 電通は、再三にわたって問題点を指摘されながら、全社的に違法な長時間労働を放置してきたとされる。社員の命を犠牲にしてまで業績を上げようとした企業責任は極めて重い。

 将来ある若者が過労で命を絶つという悲劇を、これ以上繰り返してはならない。長時間労働をいとわない旧態依然の企業体質との決別は、焦眉の急である。

 厚生労働省は昨年末、違法な長時間労働があった企業名の公表対象を拡大する緊急対策をまとめた。しかし、公表に踏み切る条件が依然厳しく、長時間労働が蔓延(まんえん)する現状を大きく改善するには物足りない内容だと言わざるを得ない。

 従来型の行政指導や企業の自主的な取り組みに任せていては、働き方改革は前進しない。政府の有識者会議は、3月中にまとめる実行計画に、過重労働を強いる企業体質に鋭く切り込む具体策を盛り込まなければならない。

 法規制に向けた議論を進める一方、企業を監督指導する体制の強化も急ぐべきだ。厚労省が2016年4月から9月にかけて、長時間労働が疑われる約1万事業所を監督指導した結果、4割で労使協定を超える残業などの法令違反があった。

 厚労省は新年度、長時間労働を扱う「過重労働特別対策室」を新設する方針だ。悪質な企業の取り締まりを徹底するための体制を、しっかりと構築してもらいたい。

 長時間労働の悪弊は、経済界も深刻に受け止めているようだ。経団連は2017年の春闘に際し、経営トップが率先して長時間労働の撲滅に取り組むよう訴えた。

 日本企業の労働生産性は、米国や英国など先進7カ国で最も低いのが実情だ。女性の社会進出も遅れている。人口減少と高齢化で人手不足が深刻さを増しつつある中、生産性の向上や優秀な人材確保の面から、効率よく働ける柔軟な職場環境の整備は待ったなしである。

 労使双方が「もはや長時間労働で、競争力を追い求める時代ではない」との共通認識を持ち、それぞれの立場から企業風土の改革に取り組む必要がある。