高血圧の予防につながるトマトやアレルギー物質が少ない卵を産むニワトリといった、人間にとって都合のいい食べ物が、続々と誕生しているらしい。狙った遺伝子を効率的に改変する「ゲノム編集」の技術を使っている

 これまでに開発された食品は、新たな遺伝子を導入するのではなく、もとある遺伝子を働かないようにしたものが多い。体の大きなマダイやブタ、食中毒を起こさないジャガイモなども、このタイプである

 遺伝子の機能喪失は、自然界でも起こり得る。従来の品種改良と見分けることも難しい。だったら厳格な安全性の審査はいらない、国への届け出で十分だ、とする報告書を、厚生労働省の専門部会がまとめた。夏には販売可能となる見通しである

 規制が緩ければ、開発はより促進されるだろう。ぶつぶつと遺伝子を切断し、特定の機能を失った大量の農林水産物が出回るようになるかもしれない。産業の発展には寄与しても、新しい技術と向き合う姿勢として、それでいいのか

 米国では食品ごとに安全性を判断する。欧州連合は対応を検討中だが、遺伝子組み換え作物と同様に規制するべきだ、との司法判断も出ている

 口に入れるものである。本当に大丈夫か、との不安は残る。長期評価も含めて、もう少し慎重であってもらいたい、と消費者の一人として思う。