安倍晋三首相がトランプ米大統領と電話会談を行い、日米同盟の重要性を確認した。

 トランプ氏が決めた環太平洋連携協定(TPP)からの離脱や、在日米軍駐留経費に関する議論はなかった。

 両氏は、2月10日にワシントンで日米首脳会談を開くことで合意した。焦点の通商問題などを巡る論議が本格化するとみられる。

 「米国第一」を掲げ、保護主義を強めるトランプ氏から、自動車や農産物で法外な要求を突き付けられる可能性もある。日米貿易摩擦が再燃しないか心配である。

 トランプ氏は電話会談で、「日本は米国にとって極めて重要なパートナーだ」「(米国の)雇用をつくってほしい」と述べた。これに対し、安倍首相は自動車産業など日本企業の米国への貢献について説明し、理解を求めた。

 両首脳は、日米の経済関係の重要性と2国間の貿易・投資関係の強化で一致した。

 問題はその手法である。トランプ氏は、TPPに代わる日米間の新たな通商協定の締結を要求する見通しだ。その中で、米国からの自動車輸出を増やす仕組みや円安誘導の禁止を要求するとみられる。日本がTPPで重要5品目の一つとした牛肉の関税撤廃などを求める公算も大きい。

 2国間協議となれば、安倍首相は難しい対応を迫られようが、日本の立場を貫いてほしい。TPP交渉での合意はぎりぎりの折衝の産物であり、それ以上の譲歩はできないはずだ。

 トランプ氏も、前政権の交渉結果の重さをよく認識すべきである。

 日米間では過去に、繊維製品や自動車、半導体を巡る貿易摩擦が問題化し、日本が譲歩を強いられた経過がある。

 行き過ぎた保護主義が、新たな貿易摩擦を生み出し、日米間の良好な関係を損なう事態は避けなければならない。

 トランプ氏は「日本の安全確保に対する米国の確固たる責任」を確認した。マティス米国防長官の2月初旬の来日については「新たな日米関係の強固な態勢について話し合いをする」と強調した。

 気になるのは、トランプ氏が大統領選で言及した在日米軍駐留経費の負担増である。安倍首相は負担額は適正だとの観点から応じない方針だ。

 ただ、これまでの対米交渉を踏まえると、抗し切れるかどうかは疑問も残る。安倍首相には気後れしない、毅然(きぜん)とした姿勢が求められる。

 トランプ氏は、初めての首脳会談の相手に選んだメイ英首相とは友好ムードで、「特別な関係」を確認した。一方で、歴代の米政権が重視してきたメキシコとは壁建設問題で対立を鮮明にしている。

 移民や難民への対応には米国内でも批判が強く、国際社会の反発も招いている。

 経済、安全保障とも、相手を値踏みするかのようなトランプ流の外交戦術と真意をよく見極めて、効果的に対処することが大事だ。