三菱重工業の子会社、三菱航空機が開発している国産初のジェット旅客機MRJ(三菱リージョナルジェット)の初納入時期が2年延期され、2020年半ばとなった。

 安全性をさらに高めるために、電子機器の設置場所などの設計変更を行う。

 何よりも安全確保は大切だが、納入の延期は5度目である。国内外で三菱の信用を維持できるのだろうか。

 MRJはプロペラ機の「YS11」以来、半世紀ぶりとなる国産旅客機であり、政府も後押しするプロジェクトだ。

 日本のものづくりの威信が懸かっている。世界との競争に立ち遅れないよう、開発体制の立て直しが急務だ。

 設計変更では、操縦かんの動きを機体に伝える「飛行制御システム」などの電子機器のうち、同じ系統が1カ所に集中しているものを、機体の前後に振り分けた。海外では分散配置が主流で、航空機開発の経験のある外国人技術者も採用していたが、その意見を反映できなかったためだ。

 現状では、商業運航の前提となる国の安全性認証「型式証明」を取得できない恐れもあった。ガバナンスに問題があったということだ。

 今後は、外国人技術者の権限を強化し、知見をくみ上げる体制に改める。

 それにしても、設計変更の代償は大きい。現在3千億円規模と想定する開発費は、約1千億円増える見通しだ。

 販売面への影響も懸念される。受注した447機の約半数はキャンセルできる契約になっている。25機を発注したANAホールディングス(HD)は納入を待つ構えで、32機の日本航空も小型機をMRJに統一する方針だ。

 問題は、全体の8割以上を占める海外航空会社である。

 MRJは座席数70~90程度のコンパクトサイズで、軽くて丈夫な炭素繊維複合材を使った機体や最新鋭のエンジンによって、海外メーカーの従来型機よりも2割程度、燃費がよいのが強みだ。

 だが、ライバルであるブラジルの航空機製造大手エンブラエルも、同じエンジンを搭載した新型機の開発を進めている。MRJがいつまで優位性を保てるかは分からない。

 三菱重工は開発の遅れに対応するために昨年11月、社長直轄の委員会設置に踏み切った。MRJに続く次世代航空機の設計や、競合相手との差別化技術の開発を進める新たな組織も発足させる。

 対応が後手に回った感は否めないが、三菱重工が開発に深く関わるのは、当然の措置だ。さらに、三菱航空機の社長交代も決めた。重工本体で防衛・宇宙事業のトップを務める水谷久和常務執行役員を航空機社長に送り込む。

 背水の陣という決意の表れだと受け止められる。

 膨大な部品を要する航空機産業のすそ野は広く、雇用の創出も期待できる。

 日本の航空機産業の未来のためにも、開発を成功させなければならない。