の下で語り合う鷲尾さん(左)と黒沢さん=大津市の石山寺

 1985年の日航ジャンボ機墜落事故の犠牲者を追悼する桜が植わる大津市の古刹石山寺を、事故現場「御巣鷹の尾根」(群馬県上野村)を管理する黒沢完一さん(75)が25日、初めて訪れた。犠牲者の一人、能仁千延子さん=阿南市那賀川町出身、当時(22)=の姉で、座主の妻の鷲尾博子さん(63)が出迎え、一緒に花見をしながら労をねぎらうなどして交流した。

 鷲尾さんと対面した黒沢さんは、昨年末と今月21日に尾根で撮った千延子さんの墓標の写真3枚を贈った。鷲尾さんは花が供えられた様子を見て「事故を風化させぬよう、大変な作業をずっと続けてくれている。本当にありがとうございます」と頭を下げた。

 黒沢さんが石山寺に追悼の桜が植えられているのを知ったのは3年前。尾根を訪れた遺族から聞き、「自分の目で確かめたい」との思いを募らせていたという。

 満開となったヒガンザクラやオオカンザクラなど約280本の桜を眺め「尾根にもヤマザクラなどの花を植えている。食害で育てるのは簡単ではないが、石山寺に負けないような美しい場所にしたい」と、決意を新たにしていた。

 千延子さんは大学卒業後、都内のアパレル関係の会社に就職した年の帰省中に事故に遭った。千延子さんが搭乗前、羽田空港から実家にかけた電話でやりとりしたのが鷲尾さんだった。「徳島の天候が悪いと伝えると『ちょっと怖い』と言っていた。それが千延子の最期の言葉だった」と振り返る。

 桜の植樹を発案し、「悲しみはずっと消えない」と言っていた母の能仁怜子さんは昨年、88歳で他界した。鷲尾さんは「13年前に亡くなった父と母、そして千延子がやっと一緒になれた。きれいに咲いた桜を見ると、みんな安らかでいてくれる気がする」と涙ぐんだ。