政府が、親権者によるしつけでも体罰を禁止するとした児童虐待防止法と児童福祉法の改正案を閣議決定し、国会に提出した。

 しつけに名を借りた児童虐待事件が後を絶たない中、家庭内の私的な領域に踏み込んだ対応策である。

 千葉県野田市で小学4年女児が死亡した事件を挙げるまでもなく、子どもに精神的、肉体的な苦痛を与え、人格を否定するような体罰は断じて許されない。

 そうした意識を社会全体に広く浸透させるためにも、しつけの体罰禁止に向けた法整備は時代の要請だろう。国会は、一日も早く改正法を成立させる必要がある。

 ただ、体罰禁止を法的に位置づけたものの、改正案に罰則規定は入っていない。このため実効性がどこまで確保できるかは不透明だ。

 日本には、家庭での体罰を容認する意識が根強く残っている。非政府組織(NGO)「セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン」が2017年に行った意識調査でも、しつけのための体罰について容認する回答が6割近くに上っているのが実情だ。

 親権者に必要な範囲で子どもを戒めることを認めている民法の「懲戒権」との整合性を問う声も少なくない。

 そこで重要なのが、家庭での体罰とは何なのか明確な定義を示し、国民の意識を変えていくことだ。どこまでの言動なら許容され、どこからが許されない行為なのか。政府は、両者を分かりやすく線引きしたガイドラインを早期に作成してもらいたい。

 その上で、体罰によらないしつけを社会の共通認識とするための啓発活動に知恵を絞り、子どものしつけに悩む保護者への支援を積極的に展開していくことが大切だ。

 千葉県野田市の虐待事件で問題視されたのは、死亡した女児が記した学校アンケートの内容を、市教委が無断で父親に渡すなど、児童虐待に関する対応ルールが守られていなかったことだ。

 その反省を踏まえ、改正案では学校、教育委員会、児童福祉施設の職員に守秘義務を課した。当然であり、国や自治体は法整備を待たずとも徹底しなければならない。

 虐待問題の最前線で活動する児童相談所の体制強化も急いでほしい。

 中でも重要なのが、虐待を加える親権者から子どもを引き離して保護する「介入」機能の強化だろう。かけがえのない命を守るためにも、政府は人員面などの手当てをしっかりと行うべきである。

 併せて、児童相談所で虐待対応に当たる児童福祉司の資質向上策のほか、医師や弁護士の配置も進めていかなければならない。

 いずれにせよ、虐待問題の根絶を児童相談所だけに求めても限界がある。学校や警察などの関係機関が密接に連携し、社会全体で子どもを守っていく一層の体制整備が欠かせない。