県立文学書道館で5月28日まで開かれた「寂聴と徳島」展。徳島市出身の作家で僧侶の瀬戸内寂聴さんと故郷とのかかわりを、著書の抜粋や写真、ゆかりの品などで紹介した。関連イベントとして5月20日、展示解説の後、周遊船で阿波十郎兵衛屋敷に移動し、寂聴さん原作の人形浄瑠璃「モラエス恋遍路」を鑑賞するツアーがありました。ツアーの様子をリポートします。

ツアーに参加したのは、抽選で選ばれた23人。

まず、文学書道館で職員による展示解説を聞きました。

街角で繰り広げられる人形芝居「箱まわし」に夢中になった経験が寂聴さんの文学の原点であること、阿波踊りでは自ら「寂聴連」を率いて踊ったことなどが紹介されています。

徳島ゆかりの人物についてつづった文章では、幼い頃、晩年を徳島で過ごした文人モラエスに会ったときのエピソードも。参加者は興味深そうに聴き入っていました。

職員(左)の解説に聴き入る参加者=県立文学書道館

展示解説の後は、10分ほど歩いて、助任川河岸緑地にある寂聴桟橋へ。ここから周遊船に乗り、川を移動して阿波十郎兵衛屋敷に向かいます。

寂聴桟橋から船に乗り込み、十郎兵衛屋敷を目指す

助任川を西に出発。三ツ合橋から新町川を北に向かい、新町樋門を通り抜けると吉野川です。水しぶきを上げながら広々とした川を下り、吉野川橋、吉野川大橋も川面から見上げます。宮島樋門を通過すると、十郎兵衛屋敷近くの桟橋に到着しました。

藍染ののれんをくぐって、阿波十郎兵衛屋敷へ。

演目は、寂聴さんが原作を手掛けた人形浄瑠璃「モラエス恋遍路」。2007年に徳島県で開かれた国民文化祭のために、子どもの頃モラエスに会ったことのある寂聴さんが、自分の文学の原点である人形浄瑠璃作品として描きました。

上演前には、三好市出身の人形遣い勘緑さんが解説。この作品のために特別にモラエスの人形を作ったこと、舞台装置を転換できない会場で、二つ以上の場面を演じ分ける演出の苦労などを語りました。

いよいよ上演。太夫は竹本友代さん、三味線は鶴澤友輔さん、人形は「とくしま座」が遣います。

劇中では、モラエスら登場人物が阿波踊りを踊るシーンもあり、情感たっぷりの芝居に、観客は大きな拍手を送りました。

情感たっぷりの「モラエス恋遍路」の一場面

祖母の村山百代さんと参加した小学2年の森西夏実さん(7)は、「人形浄瑠璃は2回目で難しかったけど、おばあちゃんと一緒に船に乗って楽しかったです」と笑顔。

村山さんは「今はまだ十分に理解できなくても、幼い頃に徳島の郷土芸能に親しんでいれば、大人になったときに身近に感じてくれると思って参加しました。こうしたツアーなら参加しやすいですね」と話していました。

◆徳島市中心部から船で十郎兵衛屋敷に向かって阿波人形浄瑠璃「傾城阿波の鳴門」を鑑賞し、藍染体験をするツアー「じょうるりクルーズ」は、10月までの毎週日曜に開催中(有料、要予約)。問い合わせ、申し込みは阿波十郎兵衛屋敷〈電088(665)2202〉。

(2017年5月21日)

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