欧州連合(EU)が、前身の欧州経済共同体(EEC)を発足させたローマ条約の調印から60年を迎えた。

 記念の首脳会議でユンケル欧州委員長は「われわれは今日、分かつことのできない連合体に対する誓いを新たにする」と述べた。

 排他的なトランプ米政権が誕生し、ポピュリズム(大衆迎合主義)や反EUを掲げる勢力が欧州で台頭する中、テロの脅威も増している。

 分断が広がり、混迷が深まる世界にあって、EUが担うべき役割と使命は、今もなお大きいといえよう。

 岐路に立たされているEUは、どこへ向かうのか。改めて結束を強めていかなければならない時である。

 欧州の秩序ある発展こそが平和と安定の礎になることを忘れないでほしい。

 懸念されるのは、ドイツやフランスなどが主唱した、条件が整った国々がそれ以外の国を待たずに防衛や内務などの統合を進める「統合速度の多様化」に、ポーランドが猛反対していることだ。

 イスラム教徒が多い難民の流入を阻み、「キリスト教文化」を守りたいハンガリーは、難民受け入れの分担を求めるEUと対立している。人権を巡る価値観が共有できていない。

 司法や報道の統制を進めるポーランドとEUの溝も深まっている状況だ。

 EUは、欧州28カ国が主権の一部を移譲して構成する超国家的組織である。

 その原点は、1952年に設立された欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)だ。経済統合を進めたEECや欧州共同体(EC)を経て、93年に発足した。

 状況が激変したのは、2000年代後半以降である。ギリシャに端を発した債務危機のほか、難民危機や頻発するテロが追い打ちをかけた。難題が複雑に絡み合う格好で、各国でEUへの懐疑論が広がっている。

 それを象徴するのが英国の動きである。東欧労働者の英国への大量移民は、EU離脱論を後押しした。

 英国はきょうEU離脱を正式に通知する。これを受け、近く離脱に向けたEUとの交渉を始めるという。

 EUは、他の加盟国への波及を阻止するため、英国に対して厳しい姿勢で臨む見通しである。離脱が成功すれば、他国が続く恐れがあり、結束を揺るがしかねないからだ。英国の離脱後に残る27加盟国による連帯が問われよう。

 一方、英国のメイ首相は、国民の結束を図りつつ、最大限有利な結果を導きたい考えだが、国会議事堂付近でのテロや北部スコットランド独立問題などの内政課題も山積している。

 交渉の行方とともに、欧州の政治情勢に対する懸念が強まれば、その影響は多岐にわたる可能性がある。

 試練を迎えたEU、英国は将来像をどう描くのか。予断を許さない。