韓国の朴槿恵(パククネ)前大統領が、ついに逮捕された。

 収賄や強要など容疑は13件に上り、検察の逮捕状請求を審査したソウル中央地裁が逮捕を認めた。

 前大統領の罷免を決定した憲法裁判所が先月、「容認できない重大な憲法、法律違反があった」と断じており、予想された結果と言えよう。

 だが、4年余りにわたって一国のリーダーを務めた人物が罷免のわずか約3週間後に逮捕され、拘置所に収監された衝撃は大きい。

 韓国社会を揺るがした一連の疑惑を巡る問題は最大のヤマ場を越えたが、混乱が収拾に向かうかどうかは不透明だ。韓国は日本にとって重要な隣国であるだけに、動向を注視していく必要がある。

 地裁は、逮捕状の審査結果について「主要嫌疑が認められ、証拠隠滅の懸念があり、逮捕の理由と必要性、妥当性が認められる」と発表した。

 検察や特別検察官はこれまでに約40人を起訴し、うち約半数を逮捕している。こうした点も考慮したとみられる。

 容疑を否認する前大統領は、自身が事実上「自宅軟禁」に近い状態にあるとして証拠隠滅はできないと反論したようだが、退けられた。

 罷免後も大統領府の家宅捜索を拒み、証拠隠滅が強く疑われる状況では、強制捜査に至ったのは当然だろう。

 前大統領の収賄容疑は、親友の崔順実(チェスンシル)被告と共謀し、韓国最大の企業集団、サムスングループから約298億ウォン(約30億円)の巨額賄賂を受け取ったというものだ。

 このほか、崔被告が支配する財団への資金拠出を大企業に要求した強要や職権乱用、公務上の秘密漏えいなどの疑いも掛けられている。

 大統領の地位と権限を使って私腹を肥やしたという構図に、国民の怒りが高まったのは無理もない。一方、前大統領の支持者らは無実を信じ、捜査に強く反発している。

 攻防の舞台は今後、検察による起訴を経て法廷に移る。国民が納得できるよう審理を尽くし、真実を明らかにしてもらいたい。

 韓国の大統領経験者が逮捕されたのは盧泰愚(ノテウ)、全斗煥(チョンドゥファン)両氏に続いて3人目である。ほかにも、4人が親族の不正などで退任後に厳しい追及を受け、このうち盧武鉉(ノムヒョン)氏は取り調べの後に自殺している。

 これでは、大統領権限の私物化は韓国政治に付き物なのかとも思いたくなる。強大な権限を分散するなど、制度の見直しが急がれよう。利権に群がるような社会の悪弊も断たなければならない。

 注目されるのは、来月9日の出直し大統領選である。次期大統領には、先鋭化した国民の対立を和らげ、政治の信頼を取り戻す責任がある。

 韓国は核・ミサイル開発を進める北朝鮮への対応など、地域の安全保障に重要な役割を担っている。日米両国との連携が不可欠なのは言うまでもない。各候補と国民には冷静な判断が求められる。