米軍がシリアのアサド政権の空軍基地を巡航ミサイルで攻撃した。
 
 トランプ米大統領は、アサド政権軍がシリア北西部で猛毒のサリンとみられる化学兵器を使ったと強く非難し、対抗措置として攻撃を命令したと発表した。
 
 必要と判断すれば武力行使も辞さないという強硬な姿勢を世界に示し、迅速に決断するトランプ流をアピールした形だ。

 非人道的な大量破壊兵器である化学兵器の使用は、断じて許されない。アサド政権は使用を否定しているが、国連と化学兵器禁止機関(OPCW)が昨年、政権軍が過去に使ったとの報告をまとめており、今回も疑いが濃厚になっていた。

 真相を究明し、二度と使われないようにしなければならない。

 米国防総省によると、攻撃したのは、サリンを使ったとみられる空爆を実施した軍用機の基地である。

 トランプ氏はこれまで、アサド大統領の退陣にこだわらないとしてきた。だが、化学兵器の使用により「一線を越えた」とし、「私の考えは大きく変わった」と方針の転換を示唆していた。

 アサド政権の化学兵器使用疑惑を巡っては、2013年にオバマ前米政権が「越えてはならない一線」と宣言しながら、軍事介入を断念した経緯がある。

 これがシリア情勢を悪化させた要因だと繰り返し批判してきたトランプ氏にとって、引くに引けない状況だったと言えよう。

 米国の武力行使は、核・ミサイル開発を進める北朝鮮と、その後ろ盾である中国への圧力となったのも間違いない。巡航ミサイルは、中国の習近平国家主席との米中首脳会談がまさに始まったばかりの時に発射された。

 トランプ氏は会談の直前、北朝鮮問題について「中国が解決しようとしない場合は、われわれが対処する」と言明していた。脅しではないことを行動で示したのだろう。

 懸念されるのは、アサド政権の後ろ盾となっているロシアと米国との関係が決定的に悪化することである。

 ロシアに圧力をかける狙いもあったとみられるが、奏功するかは見通せない。アサド政権の化学兵器使用を否定するロシアは、米軍の攻撃を国際法違反だと非難した。

 トランプ政権になって以降、反体制派への支援を弱めていた米国が軍事介入に踏み切ったことで、シリア内戦の和平協議が一層複雑化する恐れがある。

 内戦をこれ以上、泥沼化させてはいけない。最悪の事態にならないよう、米ロには冷静な対応を求めたい。

 7年目に入った内戦では、既に40万人以上が死亡し、15年末時点で約487万人が難民になったとされる。

 国際社会が結束して、悲劇を止める方策を見つけなければならない。