徳島県の伝統的な織物「阿波しじら織」。「シボ」という凹凸がある木綿の生地は、さらりとした肌触りで、軽くて涼しい。蒸し暑い夏を心地よく過ごすのに適した素材は、浴衣や甚平、近年ではクールビズ用のシャツなどに取り入れられている。

阿波しじら織を手掛ける明治30年創業の「長尾織布」(徳島市)では、糸染めから機織り、作務衣など商品への加工・販売までを一貫して行っている。阿波しじら織ができるまでの工程を見せてもらった。

阿波しじら織をつくる「長尾織布」(徳島市)

【阿波しじら織】江戸時代末期、内職で機織りをしていた海部花が、雨に濡れた後強い日差しで乾いた布に凹凸ができたことをヒントに考案した。1978年には藍染の糸を使った「阿波正藍しじら織」が国の伝統的工芸品に指定されている。

阿波正藍しじら織の反物。深みのある青色と生地の凹凸が特徴

阿波しじら織の特徴は、生地の表面の凹凸で、さらりとしていて蒸し暑い夏を快適に過ごせる。呉服店などに置かれるしじら織見本帳には、さまざまな色柄の生地見本がとじられている。

阿波しじら織見本帳。さまざまな色や柄の生地がある

工場の屋根は、北の窓から光を取り入れるため、のこぎりのようになっていて、中ではガシャンガシャンと織機が動く音が響いている。

のこぎりのようになった工場の屋根。北側の窓から光を取り込む

まず、白い糸を染めたり水洗いや糊付けしたりした後、天日干しする。

しじら織に多く使われる青や紺の糸は、化学染料で染めてから最後に藍で染め、色に深みを出している。

染めた糸を天日干しする。青色は、化学染料で染めた後、仕上げに藍で深みを出す

糸を木管に巻き直す「糸繰り」という作業の後、「整経機」で縦糸を並べて生地の柄を作る。

染めて木管に巻いた糸

整経機。縦糸の並びで柄をつくる

いよいよ機場(はたば)で、生地を織っていく。

浴衣など着物の生地の幅である着尺幅(38センチ幅)に生地を織りだしていく小幅の織機は約80台あり、古いものでは1930年代の機械が動いている。1台の織機で1日に織れるのは2反(約25メートル)ほど。

着尺幅の織機。戦前から使われているものもある

シャツやブラウスなど洋服に用いる広幅の生地の織機は、幅114センチで、1日に30~40メートルほどを織り上げる。

広幅の織機。生地は洋服などに使われる

着尺幅の出荷は3~4月が多く、縫製工場に送る広幅の生地は冬場に多く生産されている。

織り上がった生地は、「検反機」で、反物の色むらや傷がないか、人の目でチェックして仕上がりを検査する。

検反作業。反物を繰りながらチェックしていく

織り上がったばかりの生地にはシボはなく、湯通しし、乾燥させる仕上げ作業を経てしじら織特有の凹凸が現れる。

倉庫で保管される阿波しじら織の生地

縦糸、横糸ともに綿の生地のほか、縦糸は綿、横糸を麻や絹にした製品もある。

完成した生地は、呉服店などを通じて浴衣や着物に仕立てられるほか、さまざまな商品に加工される。工場に併設されたショップやインターネットで、甚平や日傘、ネクタイなどを販売している。

【長尾織布】

阿波しじら織・藍染の工場見学(約20分、無料)や、藍染体験(約30分、1000円~)を受け付けている。(※要予約)

詳しくは、長尾織布ウェブサイトを参照。