政府は、東京電力福島第1原発事故で福島県飯舘村と川俣、浪江、富岡の3町に出していた避難指示の一部を解除した。
4町村の対象となる住民は、2月末~3月1日時点で計約1万2千世帯、約3万2千人に及ぶ。東日本大震災と原発事故から6年が経過した今、一つの節目を迎えたともいえる。
しかし、各自治体は地域の再生に向けて、ようやく一歩を踏み出したばかりである。国は懸命の取り組みを、しっかりと後押しする必要がある。
問題は、住民の帰還が進むかどうかだ。昨年8~9月、復興庁などが実施した住民意向調査で、その難しさが浮き彫りになった。
浪江、富岡両町では、5割以上が「戻らないと決めている」と回答した。30代以下の若い世代は7割前後が帰還を断念している。原発の安全性を巡る不安が根強く、医療環境や生活用水の安全性を重視する人たちが多いことを忘れてはならない。
安倍晋三首相は、復興の「新たな段階」と強調しているが、課題は尽きない。
浪江町では、イノシシなどがほぼ町の全域で出没している。居宅や農地が荒らされている所も多い状況だ。解除したからといって、すぐに帰還が進むと考えるのは早計である。
避難先で新たな生活のスタートを切った人もいる。町の将来を考えて、帰還をためらう家庭も少なくない。
複雑な思いを抱きながら、6年余りの日々を送ってきた住民に、国と東電は寄り添い続けていく責務がある。