「風光る」は春の季語である。本紙文化面の若者俳句欄「季節のひとかけら」で、この季語を使った作品が2008年の年間最優秀に選ばれた。<ピッチャーの風の大きく光りけり>。詠み人は当時、富岡西高3年だった松本千鶴さん(28)

 高校野球を眺めていた。ボールが手を離れるそのせつな、投手の生き生きとした表情が輝いて見えたのを、飾らずに表現したという。まぶしい一瞬の緊張感が伝わる、と選者の大高翔さんは激賞している

 08年といえば、選抜高校野球で富岡西高が21世紀枠の候補となりながら落選した年。お預けとなった甲子園での「風光る」は、11年を経たきのう実現した

 出場校で最も打率の高い東邦(愛知県)を相手に、全くひるまない。長打は許さず互角の勝負。しぶとく追い付いた同点劇は大いにしびれた。敗れはしたものの、光っていたのは投手だけではない。「野球のまち」の面目躍如である

 松本さんは東京でコピーライターをしながら句作を続けている。この日はテレビで母校の活躍を見届けたそうだ。「残念です。でも、強豪校に1点報いた瞬間は感動しました」。湧き立った句は<振り抜きて春の風へと駆けにけり>

 余勢を駆ってもう1句。<春の日を受け赤腕の逞しく>。校色とするえんじのアンダーシャツは確かにまぶしく、たくましかった。