新人同士の一騎打ちとなった阿波市長選は、前副市長の藤井正助氏が元市議の原田健資氏を破り、初当選した。
 
 藤井氏は、合併前の旧阿波町職員から今年1月に副市長を退任するまで、47年間にわたって町・市の行政に携わってきた。投票率は低かったが、大差をつけたのは、豊富な行政経験が評価されてのことだろう。
 
 藤井氏は、引退する野崎國勝市長の路線を基本的に引き継ぐ考えを示している。2期8年の野崎市政の成果を礎としながら、藤井カラーを打ち出し、より暮らしやすい市になるよう努めてもらいたい。
 
 選挙戦で藤井氏が重点的に訴えたのは、子育て・教育環境の充実や雇用の場の確保、「農業立市」の推進などだ。いずれも、人口減少への対応をにらんだものである。
 
 2015年の国勢調査によると、市の人口は3万7202人で5年前から2045人減り、減少率は県全体を上回った。少子高齢化と人口の流出に歯止めをかけ、転入者を増やす方策が強く求められている。
 
 子育て支援として、藤井氏は認定こども園の整備を進めるとした。
 
 保育料を県内8市で最も低くし、全小学校区に放課後児童クラブを設置するなど、市は少子化対策に力を注いできた。しかし、過去10年間の出生率は下降傾向にあり、十分に効果が上がっているとは言い難い。さらにきめ細かな施策に知恵を絞らなければならない。
 
 豊かな田園地帯が広がる阿波市が誇るのは農業である。生産量はナス、トマト、レタスなど18品目が県内一で、コメ、野菜、畜産を合わせた農業産出額は県内トップだ。
 
 市内には、積極的に販路を拡大している若手農業者グループなど、意欲のある担い手が少なくない。半面、農家の減少や高齢化、後継者不足など、他の地域と同じく深刻な問題も抱えている。
 
 藤井氏は「第2次農業振興計画」を策定し、市内の農畜産物の認知度向上や販売促進を図ると主張した。
 
 15年度に始めたブランド化とPRの事業「市特産品認証制度」を軌道に乗せるなど、生産者のやる気を後押しするとともに、後継者や新規就農者を育てることが大切だ。
 
 「農業立市」を掲げた野崎市長の取り組みをどう発展させるのか、新市長の手腕が問われよう。
 
 移住の促進を巡っては、空き家情報を提供する「空き家バンク」を9年前に開設し、これまでに20件以上を希望者の入居につなげている。県内ではトップクラスの実績だが、登録物件は伸び悩んでおり、その確保が課題だ。
 
 Uターン者やIターン者を呼び込むには、市の総合力を高め、魅力を発信することが欠かせない。
 
 藤井氏には、市の展望を開く新たな発想と、市政をけん引する強いリーダーシップが必要だ。