お金の貸し借りや商品の売買といった、私たちの生活に身近な契約のルールを定めているのは民法である。

 明治時代の1896年に制定されて以来、121年間、契約分野は抜本的に改正されたことがない。

 民法の規定を大幅に見直す改正案が、今国会で成立する見通しとなった。

 現実の社会とずれてきたルールは、時代に合わせて変える必要がある。難解な条文は分かりやすいように書き換えなければならない。

 遅きに失した感もあるが、そうした狙いからの大改正は歓迎できる。施行日は公布から3年以内で、2020年ごろになる。政府は、混乱が生じないよう十分に周知を図ることが大切だ。

 改正される項目は約200に上る。

 取引に関しては、売り主と客との契約条項を示した「約款」のルールを新設する。今の民法には規定がなく、争いが絶えないからだ。

 改正案は、約款に合意すれば内容を理解していなくても契約が成立すると定める。半面、客に一方的な不利益を強いる内容は無効とした。

 例えば、インターネット通販で買った商品に欠陥があっても、約款に「交換はしない」「同意する」と記されていれば交換は難しくなる。「読んでいなかった」という主張は通用しない。

 しかし「故障していても一切交換しない」といった契約条項は無効で、交換の対象となる。

 購入者に自己責任を求める一方、売り主の責任放棄も認めない。バランスが取れた常識的な規定といえよう。

 取引の迅速化が求められる中、定式化した約款はネット通販や銀行、保険、運送など、さまざまな分野で使われている。法的根拠を与え、事業者と利用者双方の立場がより明確になれば、トラブル防止につながるだろう。

 未払い金や滞納金を請求する権利がなくなる期限(消滅時効)も変更する。

 現行は10年を原則とし、飲食代は1年、電気料金2年、診療費3年など、業種ごとに長さが異なっているのを、原則5年にする。

 期限の違いに合理性がなく、分かりにくいとの批判は以前から根強かった。それだけに、統一するメリットは小さくない。

 このほか、損害賠償額の算定などに使う「法定利率」を引き下げたり、中小企業向け融資の連帯保証人の保護策を強めたりと、見直しの範囲は多岐にわたっている。

 中には、普通の使い方をしていて傷んだ賃貸住宅の補修費は家主が持つなど、判例で定着した決まり事を明文化するものもある。

 社会の仕組みや商習慣の変化に沿って法律を変えるのは、国会の仕事である。長年にわたり怠ってきた責任は重い。国会は、改めて自らの役割をしっかりと自覚してもらいたい。