今村雅弘復興相が、東日本大震災を巡る不適切な発言の責任を取って辞任した。
 
 東京都内で開かれたパーティーでの講演で、大震災で受けた被害額に触れ「これがまだ東北で、あっちの方だったから良かったけど、もっと首都圏に近かったりすると莫大(ばくだい)な、甚大な被害があったと思っている」と述べた。
 
 大震災の被害を軽視し、被災者の気持ちを逆なでするもので看過できない。辞任は当然である。
 
 今村氏は4日、東京電力福島第1原発事故に伴う自主避難者の帰還について「本人の責任」と発言し、批判を浴びたばかりだった。認識不足も甚だしい。
 
 安倍晋三首相の任命責任も厳しく問われよう。首相も自ら「任命責任は首相である私にある」とした。
 
 閣僚の辞任は昨年1月の甘利明経済再生担当相以来で、第3次安倍再改造内閣では初めてである。
 
 しかし、今年3月には、務台俊介内閣府・復興政務官が台風の被災地を巡る問題発言で、今月18日には中川俊直経済産業政務官が女性問題で、それぞれ辞任した。
 
 他の閣僚からも失言が相次いでいる。山本幸三地方創生担当相が観光客への対応に関して、学芸員を「がん」と呼んだのは、つい先日のことだ。
 
 3月には、稲田朋美防衛相が大阪市の学校法人「森友学園」の訴訟に「関与していない」との発言を撤回。金田勝年法相も2月に、「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ組織犯罪処罰法改正案について「国会提出後に議論すべきだ」と国会論議を封じる文書を報道機関に発表し、謝罪に追い込まれている。
 
 安倍政権の「緩み」であり、「1強」のおごりの表れだろう。
 
 政治家の言葉が軽くなったといわれて久しいが、失言、放言が続けば、国民の信頼は遠のくばかりである。
 
 首相の復興への姿勢にも疑問符がつく。
 
 首相は、岩手、宮城、福島3県の被災地視察が計30回を超えた。だが、今年3月に行われた東日本大震災追悼式の式辞からは「原発事故」という文言が消えていた。
 
 今回の件で「首相として改めて被災地の皆さまに深くおわびを申し上げる。復興は安倍内閣の最重要課題だ」と述べたが、被災者の心の復興にも、言行一致でしっかり取り組んでほしい。
 
 大震災から6年余がたったが、今もなお多くの人が困難な暮らしを余儀なくされている。原発の廃炉作業の先行きも見通せず、福島県内では帰還困難区域が残ったままだ。
 
 被災地から、厳しい目が向けられているのを忘れてはならない。
 
 今村氏の後任には、元環境副大臣で衆院震災復興特別委員長の吉野正芳氏が就いた。大震災で被害を受けた福島県沿岸部が地元である。どこまでも被災地に寄り添う姿勢を貫かなければならない。