トランプ米大統領が就任して100日余りが過ぎた。

 選挙で公約したイスラム圏からの入国を規制する大統領令が、裁判所に差し止められるなど、政権は波乱含みの滑り出しである。

 市民らの反トランプデモも収まる気配がない。支持派と反対派の対立が、米国社会に深刻な分断と混乱をもたらさないか、懸念される。

 目を引くのは、敵対勢力への武力行使も選択肢とするトランプ政権の強硬姿勢だ。シリアへのミサイル攻撃に続き、北朝鮮には核開発放棄を求めて、軍事、経済、外交の全方位で圧力を強めている。

 行動が予測しにくいトランプ氏の「力を誇示」するような動きに、米国民も国際社会も戸惑っているのが現状ではないか。

 もちろん、国連安保理の決議を無視して核・ミサイル開発を続ける北朝鮮の行動は看過できない。日米や国際社会が包囲網を築き、挑発を封じ込める努力が必要だ。

 だが、米朝の間で緊張が高まり、軍事衝突が起きる事態は避けなければならない。

 米国には、超大国として世界の平和と安定に寄与する責任がある。トランプ氏に慎重な対応が求められるのは当然のことだ。

 大統領選で「米国を再び偉大にする」と訴えてきたトランプ氏は就任後、30本余りの大統領令に署名した。戦後最多のペースだが、意欲が空回りしている。

 カリフォルニア州の連邦地裁は、不法移民に寛容な「聖域都市」に対する補助金停止を盛り込んだ大統領令を、一時差し止める仮処分命令を出した。

 イスラム諸国からの入国規制を巡る司法判断に続いて、政権にとっては大きな打撃である。

 トランプ氏の政策を阻むのは、司法ばかりではない。

 オバマ前政権で創設された医療保険制度(オバマケア)の見直しは、依然、先行きが不透明な情勢だ。

 メキシコ国境の壁の建設費は民主党の抵抗を受け、暫定予算に組み込めなかった。

 支持率が40%程度で低迷しているのは、政権が不安定で信頼感に欠ける証左だろう。

 「米国第一」を掲げて保護主義的政策を進めるトランプ政権は環太平洋連携協定(TPP)から離脱し、2国間の通商協定で米国の要求を実現する構えだ。

 さらに、米国企業の競争力を強化するために、連邦法人税率を現状の35%から15%に引き下げる方針も示した。

 見過ごせないのは、国内産業を重視するトランプ氏が、地球温暖化対策の新たな国際枠組みの「パリ協定」離脱に言及するなど、環境保護に消極的であることだ。

 温暖化対策を推進したオバマ前政権の方針を百八十度転換すれば、国内外の反発を浴びるのは必至である。

 トランプ氏には、国際社会と協調して重要課題に対処する姿勢を求める。