国際主義の継続か、国家主義が取って代わるのか。

 世界が注目したフランス大統領選の決選投票は、欧州連合(EU)との協調を訴え、超党派の市民運動「前進」を率いる中道系のマクロン前経済相が勝利した。

 EU離脱、反移民を唱えた極右、国民戦線(FN)のルペン候補に大差を付けての当選である。

 ルペン氏が勝てば、英国の離脱など難局が続くEUの危機が一層増すとの懸念があった。英米などで台頭した「自国優先」「保護主義」といったポピュリズム(大衆迎合政治)の流れが加速する恐れもあった。

 そうした最悪の事態がひとまず回避され、「親EU」が信任されたのは歓迎できる。

 ただ、ルペン氏の得票は1千万票を超え、極右として最多を記録した。現状に対する国民の不満の高まりが表れたものだ。新大統領がこれに対処できなければ、国家主義が再び勢いづく可能性がある。

 史上最年少の大統領となるマクロン氏は、掲げた公約を着実に実行し、政権運営を軌道に乗せなければならない。

 選挙戦でマクロン氏が主張したのは、現行の路線を維持しつつ、大胆な改革を進めることだった。

 先月の第1回投票では、半世紀にわたって政権を担ってきた左右の二大政党が敗北した。グローバル化に伴う生活水準の低下や増大する移民・難民への不安、テロに対する脅威に、既存政治が有効な手を打てなかったためだ。

 マクロン氏は「グローバル化を規制するには新たなEUが必要だ」と社会的弱者への配慮をにじませ、「帰化希望者の仏語学習を充実し、社会統合を進める」と移民受け入れに理解を求めた。テロ対策では、EU域外との境界管理を格段に厳格化するとした。

 「左右対立を超えた新しい政治」の提唱が、国民を引きつけたと言えよう。

 一方、「フランス第一」を叫ぶルペン氏は、EU離脱や移民受け入れの凍結、反イスラムを強調し、貧困層や失業が多い若者らの不満の受け皿となった。

 既存政治が否定され、極右が伸長した今回の選挙は、社会の分断を浮き彫りにした。

 マクロン氏は、ルペン氏に票を投じた人々の怒りや信念を尊重するとし、「彼らが極端な主張に投票する理由をなくすため、あらゆる手段を取る」と表明した。経済の立て直しや格差の解消を図り、国民融和を急ぐ必要がある。

 ルペン氏の訴えに共感しながらも急激な変化を嫌い、棄権したり、やむなくマクロン氏に投票したりした人が少なくなかったことも忘れてはならない。

 議会に基盤を持たないマクロン氏の前途は多難だ。6月の国民議会(下院)総選挙で多数派を構築しなければ、政策の実現はおぼつかない。

 国民の怒りに真摯(しんし)に向き合い、さらに支持を広げることが重要だ。