韓国の朴槿恵(パククネ)前大統領の罷免に伴う大統領選で、革新系最大野党「共に民主党」の文在寅(ムンジェイン)氏の当選が確実になった。李明博(イミョンバク)政権以来の保守から革新へ、約9年ぶりの政権交代となる。
 
 国内では対立が激化し、国民の分断が深刻になっている。こうした混乱が続いたままでは、不安定な政権運営を強いられる。文氏は、国民の融和に向けて全力を挙げなければならない。
 
 懸念されるのは、日韓関係の行方である。
 
 従軍慰安婦問題の「最終的かつ不可逆的な解決」を確認した2015年末の日韓合意について、文氏は日本側と再交渉する考えを示している。
 
 だが、日韓合意は国同士の約束であり、政権が代わったからといってほごにできるものではない。誠実に履行しなければ、韓国の国際的な信用が失われよう。
 
 文氏は慰安婦問題など歴史問題と、その他の分野の協力を切り離して対応する「2トラック論」を提唱している。
 
 先月には、陣営幹部を通じて駐韓日本大使に、早期の首脳会談開催が「未来志向的な関係発展に役立つ」とのメッセージを伝えたが、合意の再交渉が前提なら都合が良すぎるのではないか。
 
 選挙戦では、他の主要候補もそろって再交渉や破棄を主張した。国民感情に配慮した面もあろうが、リーダーになれば責任は極めて重い。
 
 東アジア地域の平和と安定には、日米韓や日中韓の連携強化が不可欠だ。文氏は韓国が置かれた立場を踏まえ、未来志向で冷静に判断すべきである。
 
 核・ミサイル開発を進める北朝鮮に対しては、文氏は融和的な姿勢を見せてきた。南北首脳会談を実現させた盧武鉉(ノムヒョン)政権の幹部だったことなどで、対立候補からは「親北朝鮮」との批判も浴びた。
 
 そうしたことを受け、選挙戦の中盤には安全保障政策にも力を入れると訴えた。
 
 これまでの保守政権が取ってきた強硬路線も、金大中(キムデジュン)、盧両政権の融和策も、成果は乏しかった。文氏は「圧力と対話」を並行させていくという。融和に前のめりにならず、北朝鮮に利用されないよう望む。
 
 北朝鮮情勢の打開の鍵を握る米国、中国との関係も難しい対応を迫られる。
 
 韓国で運用が始まった米軍の最新鋭迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」を巡り、中国が強く反発しているためだ。
 
 文氏は配備に慎重な姿勢を崩しておらず、「トランプ大統領と対話し、解決する」と述べている。米中の両大国とどう渡り合うのか。
 
 前大統領の逮捕で改めて浮き彫りになったのは、大統領に権力が集中する問題である。政経癒着などの悪弊も指摘された。
 
 韓国が真の先進国の一員となるため、文氏は権力の腐敗、不正を防ぐ方策を早急に打ち出してもらいたい。