2012年に462万人とされた認知症の高齢者は、25年には1・5倍の約700万人にまで増え、65歳以上のおよそ5人に1人に達する。厚生労働省が公表している推計値だ。
 
 高齢になるほど認知症になる可能性は高まる。誰にとっても人ごとではない数字だろう。認知症への正しい理解を深めるとともに、住み慣れた地域で安心して生活できる環境づくりを加速させなければならない。
 
 そうした中、「第32回国際アルツハイマー病協会(ADI)国際会議」が京都市で開かれた。70を超える国と地域から認知症の人や家族、専門家らが集まり、認知症に優しい地域づくりや最新の科学的知見などを話し合った。
 
 04年に日本で初めて国際会議が開かれた際、当時は「痴呆」と呼ばれていた認知症の男性が実名で登壇し、自らの思いを語った。認知症になれば何も分からなくなる、との偏見が根強かったころだ。
 
 男性の発言を機に、病気への理解は広まり、本人の意思や希望をくみ取ろうとするケアも進んだ。国は病名を「認知症」に改め、家族や当事者団体も次々と生まれた。13年ぶり2回目の日本開催となった国際会議を受け、そうした動きを一層確かなものにしていく必要がある。
 
 17年会議の最大の特徴は、多くの当事者が主体的に企画運営に携わったことだ。「行政や周囲に任せるだけでは、自分たちの思いは施策に反映されない。声を上げることで前向きになりたい」との思いからである。
 
 これまでの認知症対策は、家族や介護者といった「支える側」が中心だった。これに対し、一部自治体では、当事者の声を施策づくりに反映させようとする取り組みが始まっている。
 
 ただ、当事者同士が体験や必要な支援策を話し合う場は整えられても、そこで出た声を具体的な施策に結び付けたり、認知症の人を政策決定のプロセスに参加させたりしている自治体は、少数にとどまっているのが実情だ。
 
 政府は15年に策定した認知症対策の国家戦略で「本人や家族の視点重視」を掲げている。ならば、認知症の人たちが必要とする施策への転換を図っていくべきである。
 
 その際、診断の精度が向上したことで早期に見つかるようになった65歳未満の若年性認知症への支援制度も充実させてほしい。
 
 昨年の熊本地震では、認知症の人たちを受け入れるはずの福祉避難所が十分に機能しなかった。南海トラフ巨大地震などの発生が懸念される徳島県などは、大規模災害時のケア体制の在り方も検討しておく必要がある。
 
 認知症の人たちのケアや見守りに、ロボットや情報通信技術(ICT)を積極的に活用する動きも各地で広がっている。技術革新をさらに前進させ、超高齢社会への対応力を高めていきたい。