政府が「天皇の退位等に関する皇室典範特例法案」を閣議決定し、衆院に提出した。
 
 昨年8月の天皇陛下のビデオメッセージに端を発した退位問題は、国会での法案審議に舞台が移る。
 
 第1条では、陛下が83歳の高齢となり、公的行為などを「自ら続けられることが困難となることを深く案じておられる」状況に言及。「国民は陛下のお気持ちを理解し、これに共感している」などと指摘し、皇位継承を定めた皇室典範の特例として、退位を認めるとした。
 
 退位後の陛下の呼称(称号)は「上皇」、皇后さまは「上皇后(じょうこうごう)」で、敬称は「陛下」とした。
 
 皇位継承順位1位の「皇嗣(こうし)」となる秋篠宮さまの呼称は法定せず、皇位継承者だと明確化する「秋篠宮皇嗣」などの呼び方の定着を図る。
 
 国民にはなじみのない事柄も多いだろう。国会審議では丁寧な説明が欠かせない。
 
 政府は与野党の幅広い賛同を得て、法案を速やかに成立させる方針だ。
 
 対象を陛下一代に限る一方で、法案名を「天皇」として将来の先例となる形にしたのは、民進党への配慮からだ。
 
 もう一つ、焦点となるのは皇位継承の安定化策を巡る付帯決議である。
 
 民進党は、退位について衆参正副議長が3月にまとめた国会見解が示した「女性宮家」創設の文言を盛り込むよう要求している。しかし、政府、与党は否定的で、調整の難航が予想される。
 
 秋篠宮家の長女眞子さまの婚約が明らかになったことが、停滞する安定化策の議論を後押しする可能性もある。仮に女性宮家が創設されるとしたら、眞子さまは筆頭格と見られてきたのである。
 
 皇室典範は、女性皇族は天皇、皇族以外の者と結婚したときは皇籍(皇族の身分)を離れると規定。眞子さまが結婚すれば民間人となって、女性皇族は14人から1人減る。
 
 菅義偉官房長官は、国会見解を踏まえ、女性宮家創設などを特例法の施行後、速やかに検討する考えを表明した。
 
 とはいえ、施行は2018年12月が想定されており、1年半以上も先送りできることになる。
 
 安定化を巡る論議を、もっと急ぐべきではないか。女性宮家創設以外の案も含めて、広く国民的論議を喚起するのが政府の責務だ。
 
 政府は、注目される退位の時期と新元号を決定し、公表する日程に関して、18年夏を軸に検討しているようだ。退位と皇太子さまの即位を12月下旬とし、改元を19年元日とすることも併せて検討する。
 
 元号の切り替えまで4~5カ月の準備期間を置くことには、カレンダーや手帳の刷り直しなど経済的ロスや混乱を防ぐ観点からも意味がある。
 
 実現すれば、約200年ぶりの天皇退位である。スムーズな交代に向けて、国会で問題点を掘り下げながら、安定化策を探ることが大事だ。