自民党の麻生太郎副総理兼財務相が率いる麻生派(44人)と山東派(11人)、政策グループ「天元会」(6人)が7月にも合流する。勢力は約60人で、安倍晋三首相の出身派閥の細田派(96人)に次ぐ第2派閥になる。
 
 党内では、夏から秋に見込まれる内閣改造や党役員人事で、数の力を誇示するのが狙いとの見方が強い。ポスト目当ての合流には疑問を感じざるを得ない。
 
 新派閥の会長に就く麻生氏は「党内で『政権交代』が可能な2大派閥」実現を標ぼうする。「党内で大きな政策集団が競い合った方が自民党は安定し、国益にかなう」と合流の意義を説く。
 
 かつての自民党は派閥が切磋琢磨(せっさたくま)し、派閥間で疑似政権交代が行われることで、長期政権につながったといえる。
 
 1979年に大平正芳首相の退陣を巡り党を二分する対立に発展した「40日抗争」、2000年に森喜朗首相に反旗を翻し、野党の内閣不信任案に同調すると退陣を迫った「加藤の乱」など、派閥抗争も激しかったが、政策論争も活発だった。
 
 過去の自民党なら、共謀罪法案に対し、党内から公然と批判の声が上がったはずだ。
 
 ところが、今の「安倍1強」の下では、活発な議論は乏しくなり、意見の多様性が失われている。首相に盾突けば、人事や選挙で不利な扱いを受けるとの恐れを抱いているためだ。
 
 党内に漂う「物言えば唇寒し」のムードが払拭(ふっしょく)されるのなら、新派閥結成は大きな意味を持つだろう。2大派閥が互いをけん制することで、首相の暴走を防ぐ機能も期待できる。
 
 しかし、実情はむしろ逆のようだ。麻生派の狙いは安倍政権を支える土台固めにあるとされる。疑似政権交代どころか、来年秋の総裁選で3期目を目指す首相を支えるというのがもっぱらの見方だ。
 
 麻生氏らの派閥と細田派が組めば、石破茂元幹事長らが出馬しても圧勝できるとの算段があるとみられる。
 
 数の力にものをいわせる、派閥の負の部分が頭をもたげてきたと言わざるを得ない。

 山東派が麻生氏に実権を委ねることにも懸念が残る。山東派は、徳島県出身の三木武夫元首相が築いた、リベラル色の強い三木派の流れをくんでいるからだ。
 
 これが途絶えてしまうのも残念でならない。
 
 少数派閥の議員が存在感や発言力を高めようとするのは分かるが、マイナス面はないのか。
 
 麻生派ナンバー2の副会長を務める衆院徳島2区選出の山口俊一氏は「細田派の1強が続くのは良くない。2強になれば緊張感が出て党も活性化する」と指摘する。
 
 山口氏は長く無派閥で活動し、派閥の弊害を唱えてきた経験がある。派閥の功罪を知っているからこそ、党内議論の活性化に知恵を絞ってもらいたい。