東京五輪開幕を目途に、徳島県などが阿佐海岸鉄道の阿佐東線で運行を始める「デュアル・モード・ビークル」(DMV)は、JR北海道が15年前に開発した。諸外国が実用化できなかった、線路と道路を自在に走れる車である。「ダーウィン」と名付けた

 進化論で知られる博物学者にちなんだのは、言うまでもない。「過疎地の足」を守るには線路だけでも、道路だけでも無理。変化に対応して進化し続ける―。そんな決意を込めたそうだ(「走れ! ダーウィン」綱島洋一著、中西出版)

 JR北海道は営業運行目前だった。だが管内で、列車事故や不祥事が相次ぐ。安全対策への集中投資を迫られ、DMV事業は2014年、断念に追い込まれた。開発に携わった社員の無念はいかばかりか

 世界初の事業を北海道から継承した徳島である。最たる目的は阿佐海岸鉄道の経営再建だが、実用化を夢見た北の社員の悲願も背負っているのだ。ずしりと重い

 阿佐東線で使う新車が披露された。ダーウィンの名は車体から消えたものの、「進化」の意思は染みついていよう

 進化論は当初、神を信仰する教会から猛烈な批判を浴びたが、時代を経て生物学の常識になった。DMVも「一過性のブームでは」との冷視が付きまとう。疑念を一掃、地方鉄道活性化の常識となってもらいたい。走れ!