地球と人類の未来に背を向ける愚行に強く抗議する。
トランプ米大統領が、地球温暖化防止の枠組み「パリ協定」から離脱すると表明した。世界2位の温室効果ガス排出国だけに、その影響は計り知れない。
トランプ氏は「他国に利益をもたらし、米国の労働者には不利益を強いる」と述べたが、地球環境より国内経済を優先する姿勢は、超大国の指導者として無責任極まりないものだ。
「米国第一」と言いたいのだろう。とはいえ、米国も温暖化の被害から逃れることはできまい。「脱炭素化」の後退は許されない。
協定の規定により、米国が正式に離脱できるのは早くても2020年11月になる。
この間、日本をはじめ各国はトランプ氏の誤りを正し、米国が残留するよう粘り強く働き掛けることが重要だ。
パリ協定は、世界の温室ガス排出量を今世紀後半に実質ゼロにし、産業革命前からの気温上昇を2度未満、できれば1・5度に抑えることを目指した国際ルールである。
15年末に190以上の国・地域が合意して採択され、16年11月に発効した。こ
れまでに批准した国・地域は、米国を含め147に上っている。
トランプ氏は、地球温暖化は「でっち上げ」で、温暖化対策が米国の経済、雇用を損なうと主張してきた。
しかし、温室ガスの排出を減らさなければ被害が深刻になることは、多くの研究者の共通認識である。
再生可能エネルギーが急激に普及し、電気自動車の導入が拡大するなど、温暖化対策と経済成長は矛盾しない。逆に、対策を怠れば巨大な市場に乗り遅れ、米国産業の競争力低下を招くだろう。
離脱の表明に対し、米企業から反発の声が相次いだのは当然である。かつて温暖化対策に反対してきた大手石油企業でさえ、協定残留を求めている。トランプ氏はこれをどう受け止めるのか。
トランプ氏は、米国が協定で設定した温室ガス削減の目標を破棄すると宣言した。
だが、米国内では、協定に沿った排出削減や再生エネ導入の目標を、独自に掲げる州や企業が増えている。そうした試みをさらに広げる必要がある。
米国の離脱表明によって、責任が一層重くなったのが他の大量排出国である。
排出量1位の中国は3年連続で石炭消費を減らすなど、想定以上の温暖化対策で存在感を増している。欧州連合(EU)との首脳会談では、協定の重要性を確認した。
6位の日本は、国内に40基以上の石炭火力発電所の計画があり、各国から厳しい視線が注がれている。このままでは、温室ガスを「30年に13年比で26%削減」するという目標の達成も危うい。
経済成長と両立できることを証明し、トランプ氏の翻意を促すためにも、対策を加速させなければならない。