天皇陛下の退位を実現する特例法案が参院本会議で可決、成立した。
 
 陛下が退位すれば明治以降の近代天皇制で初めてで、約200年ぶりとなる。まさに歴史的な法律である。
 
 政府は退位の日について、2018年12月を想定している。新元号や退位後のお住まいなど、それまでに決めなければならないことはたくさんある。円滑に代替わりが行われるよう、着実に準備を進めることが大切だ。
 
 退位を可能にする法形式を巡っては、将来の天皇にも適用できる恒久法か、陛下一代限りの特例法かで議論が分かれたが、政府の意向通り「特例法ありき」で進んだ。
 
 政府・与党は、退位の要件を設ける恒久制度化は難しいなどとして特例法を主張。これに対して民進など野党は、憲法上の疑義があるとし、皇室典範改正による恒久化を求めた。
 
 確かに、恒久制度の議論には相当の時間を要しよう。83歳という陛下の年齢を考えると、特例法としたのはやむを得ない面もある。
 
 しかし、高齢化などの問題は今後も浮上し得る。天皇退位の在り方を定める法律が、例外的なものであっていいのかとの疑問は拭えない。
 
 今回は「皇室典範の特例」とすることで将来の先例になる形とし、与野党が折り合ったが、恒久化に向けた議論を終わらせてはならない。
 
 政府が特例法にこだわった背景には、皇室典範改正の議論が、「女性宮家」創設や「女性・女系天皇」誕生に道を開くのを避けたい思惑があったとみられる。
 
 与党は衆参両院の委員会が採択した付帯決議でも、当初、女性宮家の文言を入れるのに消極的だった。
 
 だが、安定的な皇位継承を確保するためには欠かせない議論である。衆参両院の正副議長がまとめた国会見解も、女性宮家の検討を要請した。
 
 与党がそれを尊重し、付帯決議で「諸課題、女性宮家の創設等」を検討するよう政府に求めたのは当然である。
 
 ただし、検討を行うのは「本法施行後速やかに」とした。施行は18年12月と想定され、1年半も先だ。皇族減少対策が急務になる中、これではあまりに遅過ぎる。
 
 付帯決議が、皇位継承の安定確保を「先延ばしすることはできない重要な課題」と指摘したこととも矛盾する。
 
 共同通信社が先月行った全国世論調査では、女性宮家創設に62%が賛成し、女性天皇は86%、女系天皇も62%が賛成と答えた。一方、反対もそれぞれ35%、12%、36%あり、抵抗感を持つ国民が少なくないのも事実だ。
 
 国の象徴である天皇と、皇室の歴史を、どう未来に紡いでいくのか。全ての国民に関わる問題である。
 
 特例法の成立で国民の関心は一層高まろう。じっくりと落ち着いた議論をするためにも、政府と国会は検討を先延ばしすべきではない。