放射性物質のずさんな管理に、あぜんとさせられる。
 
 茨城県にある日本原子力研究開発機構の「大洗研究開発センター」で、作業員5人が機器の点検中、手袋や靴に放射性物質が付着する事故があった。
 
 放射線医学総合研究所は、このうち一部の人の肺で、放射性物質のアメリシウムが計測されたと明らかにした。人数や誰から計測されたかは公表しなかった。
 
 万が一、施設外に放出されていれば周辺の住民にも被害が及んだ恐れがある。
 
 なぜ事故が起きたのか。原因を究明し、再発防止を徹底しなければならない。
 
 事故はセンターの一室で発生した。作業員2人が作業用設備の前に立ち、ステンレス製の貯蔵容器のふたを持ち上げた際、放射性物質が飛散したという。容器には、かつて実験で使われたウラン酸化物やプルトニウム酸化物計300グラムが保管されていた。
 
 放医研は、内部被ばくした作業員から「症状が出るような健康影響があるとは思えない」としたが、十分なケアが必要だ。
 
 容器は1991年に封印されて以来26年間、一度も点検されていなかった。専門家は、長期の保管でプルトニウムの放射線の影響により、容器内の圧力が高まって破裂したとの見方を示している。
 
 問題なのは、安全管理が十分でなかったことだ。作業員は防護服を着ていたが、顔は全面ではなく半面マスクで覆っていた。
 
 原子力機構の担当者は「破裂は想定外だった」と釈明したが、原子力に関わる作業に「想定外」が許されないのは、東京電力福島第1原発事故で証明済みだ。認識が甘過ぎると言わざるを得ない。
 
 機構は、2013年にも加速器実験施設の放射性物質漏えいで、研究者ら34人が内部被ばくする事故を起こした。反省と教訓を生かせないのは、組織の在り方に問題があるのではないか。原子力規制委員会は厳しく指導してもらいたい。
 
 今回の事故の背景には、原子力研究で使った放射性物質をどう最終処分するのか、決まっていない問題がある。
 
 規制委が昨年実施した調査では、原子力機構や日本原燃など全国7カ所で、使用済みプルトニウムやウランが規則に反して「塩漬け」にされていた。中には保管期間が35年以上の例もあったという。
 
 作業員が貯蔵容器のふたを開けたのは、規制委の指摘を受けた機構が、使用済み燃料を容器に入れるため空きがないか調べるためだった。その作業で事故が起きたのは、長年にわたってずさんに保管してきたツケでもあろう。
 
 原子力を巡っては、原発の使用済み核燃料の保管や、高レベル放射性廃棄物の最終処分のめども付いていない。そうした中で、なし崩し的に再稼働が進められている。
 
 今回の事故を、重く受け止めなければならない。