政府が、経済財政運営の指針となる「骨太方針」を閣議決定した。働き方改革に続く政策の柱として、「人材投資による生産性向上」を掲げたのが特徴だ。
少子高齢化と人口減少が進む中、働き手不足が今後ますます深刻になるのは間違いない。教育などを通じて人材を育成し、活路を見いだそうという狙いは理解できる。
ただ、肝心の財源については「確保の進め方を検討し、年内に結論を得る」として先送りした。財政規律に十分配慮しながら、議論を重ねなければならない。
人材投資で挙げたのは、幼児教育と保育の早期無償化や、高等教育における給付型奨学金制度の着実な実施などである。
早期無償化の財源候補には財政の効率化と税制、新たな社会保険の三つを例示した。
中でも注目されるのは、新たな社会保険として提唱されている「こども保険」だ。現役の働き手と企業が支払う社会保険料を各0・5%上乗せすることで、1兆7千億円の財源が確保できるとする。
子どもがいない人にも負担を求めるため、幅広く理解を得られるかは見通せない。負担増となる経済界からも批判が出ている。
それでも、社会全体で子育てを応援する意義もあろう。世代間の公平性や所得制限の有無などを含め、さまざまな観点から検討してほしい。
高等教育では給付型奨学金のほか、無利子奨学金や授業料減免などを示した。
給付型は2018年度に本格実施するが、対象者は少なく、額も不十分だ。経済的な理由で進学を諦める若者が出ないよう、持続可能な安定財源を確保する必要がある。
懸念されるのは、財政健全化の行方である。
骨太方針は、基礎的財政収支を20年度に黒字化する従来の目標に加えて、国内総生産(GDP)に対する債務残高比率を安定的に引き下げる目標を新たに設定した。
基礎的財政収支は、政策的経費を借金に頼らず税収などでどこまで賄えているかを示す指標で、黒字化には厳しい歳出抑制が求められる。
一方、債務残高比率は財政赤字が拡大しても、それを上回るペースで経済が成長すれば改善する。その分、歳出を増やせる余地が生まれる。
政府・与党内には、デフレ脱却のためとして財政出動を求める声が根強い。債務残高比率の引き下げを目標に加えた背景には、経済成長を名目に歳出を拡大させたいとの思惑が見え隠れする。
しかし、目先の選挙や景気回復を優先して財政出動を繰り返した結果、国・地方の長期債務が1千兆円を超える事態を招いたことを忘れてはならない。
将来世代につけを回す新たな借金や成長頼みで財政規律を緩めれば、財政はさらに危機的な状況になる。基礎的財政収支の黒字化目標を骨抜きにしてはなるまい。
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