経営再建中の東芝が、混迷の度を深めている。再生に道筋を付けられるのか。

 鍵を握るのが、東芝の半導体子会社「東芝メモリ」の売却である。東芝は、定時株主総会までに、産業革新機構を中心とする「日米韓連合」との売却契約を目指していたが、実現しなかった。

 綱川智社長は総会で売却契約の遅れなどを謝罪したが、株主から経営陣を糾弾する声が相次いだ。不信感を払拭(ふっしょく)しなければならない。

 ここに来て、東芝は、「東芝メモリ」の売却を妨害したとして、三重県の工場を共同運営する米ウエスタン・デジタル(WD)に損害賠償を求め、東京地裁に提訴した。不正競争行為の差し止めを求める仮処分命令も申し立てた。

 WDは、東芝メモリの売却差し止めを求めて米国の裁判所に提訴している。泥沼の訴訟合戦になったのは残念だ。

 経済産業省が主導してきた日米韓連合は、政府系ファンドの産業革新機構と、日本政策投資銀行、米ファンドのベインキャピタルで構成。韓国半導体大手SKハイニックスが、ベインと連携して参画する枠組みだ。

 買収額は2兆円で、東芝メモリ株の議決権の66・6%を日本勢が握る。技術流出を防ぐ観点からも有効だ。

 しかし、WDは、競合するSKハイニックスの参加を問題視し、米ファンドなどと別の連合を組んで東芝メモリを買収すると提案している。

 一方、WDを提訴した東芝は、東芝メモリの売却にはWDの同意が必要といった「虚偽の事実を流布し、東芝の信用を毀損(きそん)した」と主張する。

 東芝は法的対応とは別に、WDが東芝メモリの機密情報を「不正に取得している」として、WDが製品開発の情報に接触できないよう遮断する対抗措置も講じた。

 それにしても東芝経営陣には、日米を舞台にした訴訟で、事態を打開できる成算があるのだろうか。

 東芝は、負債が資産を上回る債務超過の状態にある。東京証券取引所と名古屋証券取引所の1部に上場する東芝株は、いずれも8月1日付で2部に降格になる。

 東芝は2017年3月期決算を含む有価証券報告書の提出も8月10日に延期した。監査法人との対立が続いて再提出できなければ、上場廃止になる恐れがある。

 さらに延期しないよう、上場企業としての責任を果たしてもらいたい。

 来年3月末に債務超過を解消するためには東芝メモリの売却が不可欠だが、米国の裁判の行方次第では、暗礁に乗り上げる事態も想定される。

 東芝に残された時間は限られている。革新機構からも、提訴は得策ではないとの声が漏れる。WDとの話し合いで活路を開くのが、現実的な選択肢ではないか。

 不正会計に端を発した再建問題は誤算の連続だ。これ以上、混乱を引き起こしてはならない。