「安倍1強」政治の潮目が変わるのだろうか。
 
 東京都議選で自民党が歴史的惨敗を喫し、小池百合子知事が率いる「都民ファーストの会」が第1党に躍進した。
 
 衆参両院選など大型選挙で連勝してきた安倍政権にとって、大きな痛手である。
 
 自民党は過去最低の議席数の6割にも届かなかった。政権に対する反発が予想以上に強かったということだ。
 
 安倍晋三首相はこの審判を重く受け止め、傲慢(ごうまん)な政権運営を改めなければならない。
 
 とりわけ不信感を高めたのは、学校法人「加計(かけ)学園」を巡る問題である。獣医学部新設で、官邸の指示や首相への忖(そん)度(たく)はなかったのか。そうした疑問に答えず、国会を閉じて幕引きを図ろうとした。
 
 国有地を安く取得した学校法人「森友学園」に関する疑惑も残ったままだ。
 
 都議選を受けて首相は「深く反省」するとし、「やるべきことは前に進めていかなければならない」と述べた。
 
 ならば、野党が求める臨時国会を直ちに召集し、加計学園問題などの集中審議に応じるべきである。
 
 稲田朋美防衛相が、都議選の応援で「自衛隊としてもお願いしたい」と発言したのも見過ごせない。自衛隊の政治利用につながりかねないのに、首相は続投を指示した。
 
 加計学園側が、自民党の下村博文幹事長代行への献金を取りまとめていたことも表面化した。下村氏の説明は納得し難いものだった。
 
 それらの真相も国会で解明する必要がある。
 
 第2次安倍内閣が発足して4年半になる。長期政権のおごりは、強引な国会運営にも表れている。
 
 先の通常国会では、国民が不安を抱く「共謀罪」法の採決を強行した。
 
 これまでも、特定秘密保護法や安全保障関連法を数の力で成立させたが、今回は委員会採決を省略する「中間報告」という奇手まで使った。国会の議論を軽視し、民主主義を否定する暴挙である。
 
 国民を甘く見た代償は大きい。信頼を回復したいなら、内閣改造など小手先の手法ではなく、その声に真摯(しんし)に耳を傾け、丁寧に説明する姿勢に転じるべきである。
 
 小池氏の責任も重大だ。築地市場の豊洲移転や東京五輪・パラリンピックの準備、待機児童対策など、課題は山積している。与党が過半数になった以上、都政の停滞をもう議会のせいにはできまい。
 
 都民ファなどの与党議員は、首長を厳しくチェックする議会の役割を忘れないでもらいたい。知事の追認機関になれば、小池氏が批判してきた「古い議会」に逆戻りし、支持は失われよう。
 
 7議席から2議席減らした民進党の力不足は深刻だ。国政で野党第1党にもかかわらず、政権批判の受け皿になれず存在感を示せなかった。
 
 これでは政権奪取など到底できまい。戦略の抜本的な練り直しが求められる。