一人の若手棋士がこれほど注目を集めたのは、羽生善治3冠以来だろうか。将棋界だけでなく、多くの人たちに希望を与えてくれた。
 
 14歳の最年少棋士、藤井聡太四段が30年ぶりの新記録となる29連勝を達成した。惜しくも30連勝はならなかったが、その健闘ぶりは称賛に値する。
 
 藤井四段は連勝中、一方的に相手を攻め倒すこともあれば、敗勢かと思われた将棋を土壇場で逆転する離れ業も見せた。
 
 斬新な着想の指し手はファンをうならせるのに十分で、将棋界に新時代の到来を告げるものだった。
 
 特筆したいのは、盤上での切れ味だけでなく、その謙虚さと礼儀正しさである。「もっともっと勉強したい」「非常に幸運でした」。飽くなき向上心と、負かした年上の相手を思いやるかのような言動に、人柄と資質がうかがえる。
 
 大きな区切りとなる30連勝は逃したが、楽しみは後にとっておけばよい。藤井四段の戦いはまだ始まったばかりだ。
 
 将棋界は今、コンピューターソフトとの対戦で現役名人が敗れるなど、人工知能に先を越されているのが現状だ。
 
 棋士は存在価値を示さなければならない。それだけに、子どもを引きつけた藤井四段の活躍は将棋の普及に意味を持つ。
 
 連勝にストップをかけた佐々木勇気五段もまだ22歳で、期待のホープである。切磋琢磨(せっさたくま)しながら、これまでの定跡にとらわれない発想で、棋界の屋台骨を担ってほしい。