日米欧に新興国を加えた20カ国・地域(G20)首脳会合は実りが少なく、先行きが案じられる結果となった。
首脳宣言で焦点となった反保護主義については、両論が併記された。「不公正な貿易慣行を含む保護主義との闘いを続ける」とした上で、「正当な貿易上の対抗措置の役割を認める」と明記した。
初めて参加したトランプ米大統領は「米国第一主義」を掲げて、保護主義的な傾向を強めている。米国が受け入れやすいよう、宣言に配慮せざるを得なかった。そこに、G20の苦悩が見える。
議長国ドイツのメルケル首相は開幕に当たって、自由貿易や地球温暖化対策の議論を念頭に「譲歩の意思がなければグローバルな課題の解決策は見つからない」と述べ、トランプ氏に翻意を促した。
日本と欧州連合(EU)も経済連携協定(EPA)の大枠合意を踏まえて、米国をけん制した。各国の首脳も自由貿易の推進を表明した。
一方、米国は、中国がダンピング(不当廉売)で輸出を増やしているとして問題視するなど、主張はかみ合わなかった。
このような形で、反保護主義を巡る議論が停滞したのは残念である。
メルケル氏は閉幕後の会見で、首脳宣言に「保護主義と闘う」との文言が入ったことについて「満足している」と話した。
しかし、一致して反保護主義の旗を掲げられなかったことは明らかだ。
トランプ氏は地球温暖化対策でも、初日の気候変動の討議を途中退席した。論議に水を差したのは看過できない。
首脳宣言では、米国が「パリ協定」からの離脱を決めたことに言及し「米国以外のG20首脳は、パリ協定は後戻りしないと明言する」とうたった。早期実現への決意を示したことは、評価すべきだ。
大陸間弾道ミサイル(ICBM)を発射した北朝鮮に関しても、不安を残した。
安倍晋三首相は「厳しい制裁措置を盛り込んだ国連安全保障理事会決議の早期採択が必要だ」と述べ、米国、韓国と共に制裁強化を求めた。
これに対し、中国やロシアは対話重視の姿勢を崩さず、温度差が目立った。
各国の利害が複雑に絡み合い、G20の結束の弱さを露呈した形である。
世界をリードすべき立場のG20が、貿易や環境など国際社会共通の喫緊の重要課題で一致できないのは、深刻な事態だ。
トランプ氏は超大国の指導者として、世界の潮流に逆行すべきではない。
2019年の首脳会合が初めて日本で開催されることも決まった。
政府は自由貿易や地球温暖化対策の必要性を認めているが、高いレベルの取り組みを進めているとは言い難い。国際協調体制を崩さないよう、主導的な役割を果たさなければならない。
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