ようやく安倍晋三首相が、学校法人「加計(かけ)学園」問題を巡って、予算委員会の集中審議に応じる意向を示した。
国民に対して説明責任を果たすのは当然であり、むしろ遅過ぎるぐらいだ。
首相の友人が理事長を務める加計学園が、政府の国家戦略特区制度を活用して進める獣医学部の新設計画に関する疑問の核心は、選定に当たって、首相官邸の意向が働いたかどうかである。
集中審議には、前川喜平前文部科学事務次官が、新設手続きを促されたと指摘した和泉洋人首相補佐官の出席も検討されている。
衆参両院の国会の閉会中審査で、参考人招致された前川氏は「和泉氏がさまざまな動きをしていた」と語った。
前川氏は昨年9、10月に、和泉氏から「総理は自分の口からは言えないから」などと新設に向けた対応を求められたとも述べた。事実関係を解明しなければならない。
「背景に官邸の動きがあった」と首相官邸の関与を強調する前川氏に対して、萩生田光一官房副長官は関与を否定し、双方の主張は対立したままで終わった。
閉会中審査は物足りないものだったし、首相の外遊中に実施したこと自体が、問題だった。
これまでも、首相は関与を否定しているが、疑惑を払拭(ふっしょく)したいのなら、説得力のある説明を求める。
予算委での集中審議が実現する運びとなったのも、迷走の末の決着だった。
当初、自民党の竹下亘国対委員長は、民進党の山井和則国対委員長との会談で、開催を拒否していた。
ところが、首相が「自ら国会の場に出て説明する意思はある」との意向を示したことから、一転して応じることになった。
強気の姿勢を貫いてきた首相も、東京都議選で自民党の大惨敗を招いたことへの批判と、「安倍1強」を支えてきた世論の変化には抗し切れなかった形だ。
報道各社の世論調査で、内閣支持率は軒並み30%台に急落している。
時事通信が行った7月の世論調査では、支持率が前月比15・2ポイント減の29・9%に低下した。2012年12月の第2次政権発足以来、30%を割ったのは初めてである。不支持率は48・6%に上る。
加計学園に関する首相の発言については、「信用できない」が67・3%で、「信用できる」の11・5%を大きく上回った。
通常国会閉会後の記者会見で首相は「真摯(しんし)に説明責任を果たしていく」と表明した。その言葉を実行に移さなければならない。
集中審議は、衆参両院で行われる方向だ。首相が質問をはぐらかしたり、強弁したりすれば、さらに国民の不信感が増すだろう。
首相は、主権者である国民に届くよう、丁寧に真相を語ってもらいたい。