2日間にわたった衆参の予算委員会閉会中審査は真相解明の糸口すらつかめず、むしろ疑惑がますます深まった。
安倍晋三首相の友人が理事長を務める学校法人「加計(かけ)学園」の獣医学部新設計画を巡り、首相や側近らが学園に便宜を図ったのかどうか。それを明らかにすることが、閉会中審査の目的だった。
ところが、出席した側近らからは記録や記憶がないという答弁が目立ち、首相の主張を裏付ける根拠も示されなかった。これでは、国民の納得を得られるはずがない。
事実はどうなのか。引き続き、閉会中審査を開いて究明しなければならない。与党は誠実に対応すべきだ。
驚いたのは、加計学園の新設計画を首相が把握したのは今年1月20日だったとする答弁である。
参院予算委で首相は、計画を把握した時期について、前日の衆院予算委の答弁を繰り返した上で、国家戦略特区の申請が認められた日だと強調した。6月の参院決算委の「国家戦略特区への申請段階で承知した」などの答弁は誤りだとして「おわびして訂正する」と述べた。
首相は昨年1年間、加計孝太郎理事長と少なくとも計7回、会食やゴルフを共にしている。本当に1月20日まで知らなかったのか。
過去の国会答弁との食い違いを指摘されて、しどろもどろになる首相の姿に、やはり「加計ありき」だったのではないかとの疑いを抱かざるを得ない。
しかも、山本有二農相、松野博一文部科学相、山本幸三地方創生担当相の3閣僚は、計画認定前の昨年8~9月、加計氏の訪問を受けている。このうち、松野氏以外の2人は、学部新設が話題になったと認めた。首相の答弁は、信じ難い。
加計氏が、3閣僚と立て続けに面会できたというのも不自然である。首相は「各閣僚に会うように言っていない」としたが、一事業者が、わずかな間に容易に閣僚と会えるものなのか。
疑問は尽きないし、到底納得できない。一連の首相の答弁を、どれほどの国民が信じただろうか。
首相は、低姿勢で釈明やおわびを繰り返したが、自身や官邸の関与を否定するだけの確たる証拠を示さなければ、疑惑は晴れまい。
このままでは、8月3日にも実施する内閣改造で局面を転換するのは難しいだろう。国民の不信感を増幅させるばかりだ。
首相は、南スーダン国連平和維持活動(PKO)部隊の日報隠蔽(いんぺい)問題で、稲田朋美防衛相の罷免を求められたが、これを拒否した。
特別防衛監察の結果が近く公表されるが、首相はこれまで通り、稲田氏をかばい続けられるか。
首相は丁寧に説明を尽くすとしてきたが、とても果たしたとは言えない。改めて丁寧な説明を求めたい。