南スーダン国連平和維持活動(PKO)部隊の日報隠蔽(いんぺい)問題を巡って、稲田朋美防衛相が辞任した。防衛省トップとして混乱を招いた責任を取った形だが、これで幕引きをすることは許されない。
 
 隠蔽問題に関する特別防衛監察の結果が公表されたが、肝心な点があいまいである。到底、国民の納得は得られないだろう。
 
 稲田氏は衆院安全保障委員会の閉会中審査に出席し、疑問に答えなければならない。
 
 特別防衛監察は、稲田氏が2月13日に陸自幹部から、15日には事務方トップの黒江哲郎事務次官や岡部俊哉陸上幕僚長らから日報問題の説明を受けたと認定した。
 
 陸自から日報データの存在について何らかの発言があった可能性は否定できないとした上で、データの存在が書面で報告されたり、非公表の了承を求める報告が行われたりした事実はなかったとした。
 
 防衛監察本部によると、陸自は稲田氏に日報の保管を報告したと複数が主張した。しかし、稲田氏を含む数人が否定し、証言が一致しなかったという。
 
 稲田氏は会見で「報告を受けたという認識は今でもない」と強調したが、これでは水掛け論だ。こうした重要な問題で、防衛相と陸自の認識が食い違うようでは困る。
 
 北朝鮮が大陸間弾道ミサイル(ICBM)を発射するなど安全保障の懸念が高まっている。有事に対応しなければならない防衛相が実力組織を掌握できないのは、文民統制(シビリアンコントロール)の観点からも看過できない。
 
 野党は稲田氏の即時罷免を要求し、自民党内にも早期辞任を求める声があった。
 
 それだけに、稲田氏の辞任は遅きに失したと言える。
 
 安倍晋三首相は任命責任を問われるだけでは済むまい。「秘蔵っ子」とされる稲田氏をかばい続けたことで、自衛隊の不信感を高める結果を招いたからだ。
 
 隠蔽問題を受けて黒江、岡部両氏の退職が決まったが、防衛省、自衛隊のダメージは計り知れない。組織内に禍根が残らないか心配である。
 
 稲田氏は女性で2人目の防衛相として昨年8月に就任したが、1年と持たなかった。
 
 東京都議選の自民党候補を応援する集会で、自衛隊の政治利用と取られる発言をして、非難されたのは記憶に新しい。学校法人「森友学園」の訴訟を巡っては、関与を否定した当初の国会答弁を一転させ、謝罪に追い込まれた。
 
 これまで稲田氏は政治家としての資質が疑われてきた。
 
 安倍政権は、加計(かけ)学園問題の影響や相次ぐ閣僚らの失言もあって、内閣支持率が急落している。「安倍1強」がおごりを生み、国民の支持を失ったことは確かだ。
 
 首相は内閣改造で政権浮揚を図る構えだが、目先を変えるものであってはならない。
 
 閣僚、党役員の人選では身びいきをやめ、真に国のためになる人材を登用すべきだ。