ベテランを多く入閣させるなど安定を重視した陣容となったが、失われた信頼をどう取り戻すのか。

 安倍晋三首相が内閣改造・自民党役員人事を行った。首相の友人が理事長を務める学校法人「加計(かけ)学園」問題などで内閣支持率が急落する中、麻生太郎副総理兼財務相や菅義偉官房長官を留任させるなど政権の骨格を維持した。

 初入閣は6人となったが、この布陣で何を目指すのか、いまひとつ見えてこない。

 改造の目玉は、政権と距離を置いてきた野田聖子元総務会長を総務相に起用したことだ。第2次内閣発足以来、4年半余り外相を務めてきた岸田文雄氏を政調会長に充て、後任に河野太郎前行政改革担当相を抜てきした。

 首相への「批判勢力」である野田氏や政治信条が異なる河野氏を閣内に取り込むことで「お友達優遇」との批判をかわし、挙党態勢をアピールする狙いがあるのだろう。

 河野氏は、情報発信力や改革姿勢が評価された形だ。外相や衆院議長を歴任した父洋平氏はハト派で知られ、中国や韓国との関係改善を図りたいとの思惑も読み取れる。

 一方で、閣内不一致が起きる可能性もはらんでいる。

 注目されたのは、加計学園問題を抱える文部科学相の人選だ。林芳正元農相の行政手腕に期待したとみられる。

 7月の閉会中審査では、首相の答弁の整合性が追及されるなど、疑問は残ったままだ。説明責任をしっかりと果たしてもらいたい。

 安倍政権は南スーダン国連平和維持活動(PKO)部隊の日報隠蔽(いんぺい)問題を巡って、稲田朋美防衛相が辞任に追い込まれ、大きな打撃を受けたばかりである。

 防衛相には、小野寺五典政調会長代理を再び登板させた。日報問題を踏まえ、シビリアンコントロール(文民統制)の徹底を図らなければならない。北朝鮮の核・ミサイルへの警戒も怠れない。

 焦点となったのは岸田氏の処遇だった。石破茂元幹事長と並び、衆目の一致する「ポスト安倍」候補である。

 岸田氏は、来年の総裁選への準備を進めるため、閣外に出て党務に就くことを希望していた。その要求を受け入れた上、岸田派から4人を入閣させたのは、「安倍1強」の状況が変化したことをうかがわせる。

 首相は政権の安定化に向けて、派閥のバランスを取ることに腐心したようだ。

 記者会見では低姿勢だったが、大切なのは、強引な国会運営や答弁が招いた有権者の政治不信をいかに払拭(ふっしょく)するかである。

 今回も経済最優先を打ち出し、新たに「人づくり革命」を掲げたが、看板倒れに終わらないよう、成果を出さなければならない。

 閣僚の度重なる失言や資質が問題視されてきただけに、安倍内閣は国民目線を忘れず、謙虚に諸課題に対処すべきである。