情報通信技術(ICT)を活用し、自宅や出先など会社から離れた場所で働く「テレワーク」を導入する動きが広がりつつある。
場所に縛られない働き方が浸透すれば、労働者一人一人が時間を有効活用でき、業務効率は高まるに違いない。
常態化している日本の長時間労働を是正し、多様で柔軟な勤務スタイルを導入することで、生産効率を高める働き方改革を前進させたい。
7月24日に初めて実施された政府主導の「テレワーク・デー」には、900を超える企業・団体が参加し、約6万人が在宅勤務などに取り組んだ。徳島県内でも、制度普及に向けたフォーラムが開かれたほか、県職員約100人がテレワークを実践した。
2017年度の経済財政白書も、政府が新たな成長戦略の柱に掲げる「働き方改革」推進の突破口として、テレワークの活用を促している。背景にあるのは、少子高齢化と人口減少で深刻化する労働力不足だ。
運輸、建設業を中心に日本経済が直面している労働力不足を克服するには、米国の6割、欧州の8割と低水準にとどまる労働生産性の向上を急がなければならない。
ドイツをはじめ1人当たりの労働時間が短い国ほど生産性が高く、勤務時間が10%短くなれば生産性は25%高まるとの分析もある。
テレワークは、育児や介護による離職を防ぐ「ワークライフバランス(仕事と生活の両立)」の実現にも寄与しよう。女性の就労はもちろん、優秀な人材の確保も見込めるはずだ。
大規模災害後に社員の出社が難しい場合も、自宅や出先などから事業活動の継続を図ることができる。これもテレワークのメリットだろう。
一方で、導入企業からは勤務状況の把握が難しくなったとの指摘もある。情報セキュリティーの面でも、不安を抱く管理職は少なくない。
とはいえ、新たな制度に課題はつきものだ。ITや人工知能(AI)などの最新技術を活用し、テレワークを行う社員の勤務や健康状態を把握する方策を探る必要がある。
労使双方の意識改革も大きな課題だ。皆が同じ勤務時間で長時間労働に励む高度経済成長期の働き方から、いかに脱却していくか。各企業のトップは、改革推進の姿勢を明確に打ち出し、力強く実行していくべきである。
テレワーク以外にも、1日の勤務時間を会社と自宅で分割して働く制度や、勤務時間を自由に決めるフレックスタイムなど、柔軟な働き方を可能にする仕組みは数多い。
勤務日の労働時間を少し長くして休日を1日増やす「週休3日制」を導入し、残業の抑制と休日の取得促進を目指す企業も出てきた。
日本全体で改革を進めるためには、中小企業の取り組みが鍵を握る。関係機関は、相談窓口の開設など支援体制の充実を図ってもらいたい。