徳島県内の市町村長選で無投票が目立っている。
 
 7月から8月にかけて3週続けて告示された松茂、美波、板野の各町長選を含め、2016、17両年度に行われた10市町の首長選のうち、8市町が無投票だった。
 
 健全な選挙戦は、民主的な地域社会をつくる上で欠かせない。多くの有権者が投票権を行使できなかったのは残念である。
 
 立候補者が公約を掲げ、有権者はそれを見比べながら地域の将来に思いをはせる。選挙戦に伴うそうした作業によって、民主主義は一層の深化を遂げることができる。
 
 行政に適度な緊張感をもたらす効果も期待できよう。
 
 「地域が二分されるのは好ましくない」「町政が安定している方がいい」などと無投票を肯定的に捉えようとする関係者もいるが、賛成できない。選挙戦を通じた活発な論戦が生むメリットは大きい。
 
 無投票が増えている要因としては、大きな争点が見当たらないことや市町村合併で住民と行政が遠くなったことなど、さまざまな事情が考えられる。地方財政が逼迫(ひっぱく)し、自由に施策を展開しづらくなっていることが関係しているかもしれない。
 
 そうした中で多くのケースに共通しているのは、有権者が以前ほど地方政治に期待を抱かなくなっているということだろう。
 
 有権者が無関心となり、政治との距離が広がった結果、対抗馬が現れづらい土壌ができているのではないか。
 
 無関心層の広がりは、投票率からもうかがえる。県内で16、17両年度に選挙戦になった首長選は、4月の阿波市長選と7月の三好市長選の2例だけだが、いずれも過去最低の投票率を記録した。
 
 選挙戦になっても論戦は盛り上がっていない。有権者が最も身近な政治に関心を示さなくなっている。
 
 このままでは暮らしへの影響が広がる恐れもある。有権者の関心を再び地方政治に向ける取り組みが急務である。
 
 住民目線の行政ができているか。公平で清潔な政治ができているか。行政や政治に関わる人々はまず、有権者の信頼を取り戻すために何ができるかを考えてほしい。
 
 市町村の議員選でも無投票が目立ち、投票率の低下傾向が進んでいる。無投票にとどまらず、定数割れも現実味を帯びた懸念となっており「なり手不足」は深刻である。
 
 県内では議員報酬アップを検討した議会もあったが、有権者の反発などで頓挫した。それでも放置できない課題であり、今後も真正面から向き合ってもらいたい。
 
 有権者の役割は重要だ。地元の行政や議会を注視することによって一定の緊張感が生まれるからである。
 
 行政は何に力を注いでいるか。議会はきちんとチェックできているか。一人一人がちょっとした関心を持つことが、よりよい地域社会をつくるための第一歩である。