演舞場が完成し、街は熱を帯びている。アスティとくしまで行われた前夜祭は観客を興奮の渦に巻き込み、盛況のうちに幕を閉じた。
 
 照明の点灯試験も終わり、準備は整った。待ちに待った「踊り天国」。街中に踊る阿呆(あほう)と見る阿呆があふれる徳島市の阿波踊りが、きょう開幕する。
 
 今年のキャッチコピーは「天下御免の夏きたる!」である。
 
 ぞめきのリズムが身に染みついた阿波っ子も、初めてという県外の人も、きょうから4日間、思う存分、夏の祭典を堪能してほしい。
 
 80年前、戦争で中止になった阿波踊りは、終戦翌年の1946年、市民の強い要望を連合国軍総司令部(GHQ)が受け入れ、復活した。
 
 平和だからこそ、祭りを楽しむことができる。阿波踊りが平和の象徴といわれるゆえんである。
 
 400年の歴史を持つ阿波踊りは、年々進化を遂げてきた。単純そうに見えて奥の深い踊りを極めようとする情熱が、それを支えている。
 
 一糸乱れぬ華麗な群舞や豪快に飛び跳ねる暴れ踊り、変化に富むフォーメーションも、踊り子や連が工夫を重ね、切磋琢磨(せっさたくま)してきた成果である。
 
 伝統を大切にしながら、さらに新しいものを取り入れ、より心が弾む阿波踊りを目指してもらいたい。
 
 踊りや鳴り物の技を受け継ぐ若い力が育っているのも頼もしい。きっかけは演舞場での迫力に魅了されたり、家族や友達に誘われたりとさまざまだ。徳島市の阿波おどり会館などで行う教室、講座が入り口になる場合も多い。
 
 学校の取り組みも重要だ。徳島新聞が調べたところ、県内の国公立小学校の半数以上が、運動会で阿波踊りをプログラムに取り入れているのが分かった。踊り子や地域の有志の協力が大きい。
 
 徳島市が有名連の連員を小学校に派遣する「阿波おどり育成出前講座」も、5年目を迎えた。
 
 こうした活動を続け、充実させることが裾野の拡大につながる。
 
 人種や国境を超えて、心を一つにしてしまうのも阿波踊りの良さだ。
 
 県内に住む外国人らで作る「あらそわ連」は今年、有名連の連員を招いて本格的な練習に励んだ。
 
 徳島の文化をもっと深く理解したいと、有名連に入って汗を流す外国人もいる。熱い気持ちに拍手を送りたい。
 
 悩みの種の一つは宿泊施設の不足である。解消策として徳島市が期間中、「イベント民泊」事業を実施し、徳島青年会議所はきょう、1日限りの特設キャンプ場を市内に設ける。練習場所の確保や、踊りの用具を作る職人の減少といった課題もある。
 
 阿波踊りは徳島の誇りであり、大事な宝である。官民挙げて、知恵を絞らなければならない。