政策で競う選挙の実現につなげたい。
選挙運動用の政策ビラを、都道府県議会と市・特別区議会の議員選挙でも配れるようにする改正公選法が、先の国会で成立した。
2019年3月1日に施行され、徳島県内でも次の県議選から適用される見通しだ。
選挙期間中の政策ビラ配布は、知事選や市町村長選では07年に解禁されていたが、地方議員選挙では見送られてきた。改正により、1人につき都道府県議選で1万6千枚、政令指定都市を除く市・区議選で4千枚を限度に配ることができる。
それぞれ条例で定めれば、ビラの製作費を公費で負担することも可能だ。
地方議員選は近年、なり手不足もあって全国的に低調なケースが目立つ。県内でも15年4月の県議選で、14選挙区中過去最多の7選挙区が無投票となった。直近では今年5月の吉野川市議選で、立候補者が定数を1人上回るにとどまり、投票率は過去最低を更新した。
候補者間の政策論争が活発になれば、有権者の関心も高まるだろう。候補者と有権者の距離を縮めることにもなる。選挙制度改革の一環として評価したい。
候補者は、これまで以上に政策を練り上げる努力が求められる。自治体や地域の課題に真剣に向き合い、有権者の関心が高まるよう取り組んでもらいたい。
問題は、対象に町村議選が含まれていないことだ。
今回の改正は、全国都道府県議会議長会と全国市議会議長会からの要望を踏まえて行われた。
一方、全国町村議会議長会からは要望を出していなかった。町村議選は選挙運動用自動車やポスターの作成が公費で賄われないため、全国議長会が、こちらの公費負担を求めているためだ。
町村議会は住民にとって身近な存在であるにもかかわらず、特になり手不足が深刻だ。高知県大川村が、候補者数が定数に満たなくなる恐れがあるとして、議会に代わる「村総会」の設置を検討を始めたのは記憶に新しい。
歯止めのかからない過疎の進行や少子高齢化など、多くの町村が重い課題を抱えている状況だ。
地域や暮らしにかかわる大事な問題を有権者に考えてもらうために、町村議選でも、候補者が政策を記載したビラの配布ができるようにすべきである。
市議選でできて、町村議選でできないのでは、有権者軽視ともいえよう。
これまで地方議員選は、地縁血縁頼みが幅を利かせ、政策論争に乏しかった。これが有権者の選挙離れにつながった一因でもあろう。
ビラ配布の解禁を機に、候補者はしっかりと政策を示し、自らの思いを訴えていくべきだ。住民の意識が高まれば、新たな候補者が生まれるかもしれない。