自殺死亡率(人口10万人当たりの自殺者数)を今後10年で30%以上減らす―。政府の自殺対策の基本方針となる自殺総合対策大綱が5年ぶりに更新された。
 
 2007年の初の大綱では「10年で20%減」という目標を掲げて、達成している。
 
 新大綱はハードルを上げた形だが、肝心なのは、家族や児童生徒、周りの人がSOSを出していないか、変化に気付けるかどうかである。
 
 命の重さをしっかりと認識し合うことが重要だ。
 
 自殺者数は03年に3万4千人を超えたが、16年には2万1897人まで減少した。しかし、自殺死亡率は他の先進国よりも依然として高く、憂慮すべき事態は続いている。
 
 新大綱は、この自殺死亡率を15年の18・5人から、25年には米国やドイツなどの水準に並ぶ13・0人にするとしている。人口推計を勘案し、自殺者数にすると1万6千人以下となる計算だという。
 
 ただ、自殺死亡率を年代ごとにみると、40代以上は顕著に減っているが、30、20代では減り方が鈍くなり、10代ではほぼ横ばいが続く。
 
 若年層への対策を効果的に進めなければならない。
 
 中でも大切なのは、夏休み明け前後である。内閣府によると、過去約40年間で18歳以下の自殺者数は9月1日が突出しており、その前後が一年で最も多い時期だった。
 
 原因は家庭生活のほか、学校生活に起因するとされる。心理的に追い詰められる子どもが多いのかもしれない。
 
 全国各地のNPO団体などが、子どもの”駆け込み先“の無償提供や電話相談に取り組んでいるが、これを広く浸透させたい。
 
 家庭でできることも少なくない。徳島県内で講演した家庭教育プロデューサーの酒井勇介さんは、子どもの目と表情を見てほしいとし「目はうそをつけない。毎日そうしていると子どもの変化に気付くことができる」と強調した。
 
 もとより、生きづらさを抱えているのは、子どもばかりではない。厚生労働省が16年10月に実施した調査では、成人男女で自殺したいと本気で考えたことがある人は23・6%に上るという。
 
 新大綱では、自殺対策を、生きることの阻害要因を取り除いていくことと定義し、多様な対策を打ち出した。
 
 電通の新入社員による過労自殺問題を受けて、長時間労働解消に向け、問題を抱えた企業への監督指導を強化する。職場でのメンタルヘルス対策やパワハラ対策を一層進めていくともしている。
 
 さらに、産後うつの問題で、健康診断などを通じて出産間もない女性の心身の状態や生活環境の把握に努め、育児をサポートする体制を確保するとしたのも目を引く。
 
 悩みを打ち明ける場を周知できているか、支援する人がいるか。それを点検し、充実させていくことが大切だ。私たち一人一人の意識改革が大事なのは言うまでもない。