沖縄の民意をどこまで踏みにじるつもりなのか。

 政府が、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設先とする名護市辺野古の沿岸部で、新たな区域への土砂投入に踏み切った。

 沖縄では先月末、埋め立ての賛否を問う県民投票が行われ、7割超が「反対」の意思を示したばかりだ。

 その結果を無視し、投入区域をさらに拡大するとは、あまりに強引と言わざるを得ない。政府は工事を中止し、沖縄との対話に臨むべきだ。

 新たに開始したのは、埋め立て海域南側の護岸で囲まれた約33ヘクタールの区域である。政府が昨年12月に投入を始めた区域の西隣に当たる。

 批判に一切耳を貸さず、既成事実化を進める姿勢は、県民の抵抗する意欲をそごうとするかのようだ。

 だが、工事はそんなに簡単には進みそうにない。埋め立て予定海域の東側に、軟弱地盤が広がっているからだ。

 軟弱地盤の最深部は海面から約90メートルに達し、マヨネーズ並みに軟らかい場所もあるという。改良工事が必要な面積は約73ヘクタールに及ぶ。地盤強化のため、防衛省は砂を締め固めたくいを約7万7千本打ち込む工法を検討している。

 問題は、その費用と工期が不透明なことだ。

 政府は費用を明らかにせず、総事業費を「少なくとも3500億円以上」とするだけだ。一方、県は地盤改良に1500億円かかり、総工費は最大2兆6500億円まで膨らむと試算している。

 改良工事の工期は、政府が3年8カ月とし、県は「5年は必要」と主張する。

 辺野古の新基地建設には、埋め立てと施設整備で計8年を要するとされている。地盤改良の工期を加えれば、新基地の運用まで、11年8カ月から13年もかかる計算だ。

 日米両政府が「2022年度またはその後」とする普天間の返還時期は、さらに遠のくことになる。

 そもそも、地盤改良ができるかどうかも不明だ。

 現在の技術では、砂のくい打ちは海面から70メートルが限界だという。政府は、70メートルまでで安定性を確保できると説明するが、専門家は、それでは改良が不完全になると指摘している。

 地盤改良を行うには、県に設計変更を申請する必要があるが、玉城デニー知事は応じない方針だ。

 費用も工期も明確でなく、技術的な不安がある上、設計変更も見通せない。そんな状況で、政府が掲げる「一刻も早い普天間の危険性除去」など、できるはずはなかろう。

 安倍晋三首相は、工事の中止と1カ月程度の協議の場を設けるよう玉城氏から要請されたが、拒否した。県と対立したままで、計画を進められるのだろうか。

 沖縄が問うているのは、辺野古移設が「唯一の解決策」なのかということだ。県外に住む私たちも、真剣に向き合わなければならない。