漫画家の富士屋カツヒトさんが育児体験を描いた作品に、印象深いシーンがある。夜遅く、幼子にほ乳瓶でミルクを飲ませている作者。穏やかな子どもの顔を見て「人生の主役が変わった気がする・・・」と思う。何より大切なのは、この子。吹っ切れた。仕事の悩みなんか二の次と

 男性は「母乳」を与えられない。ゆえにミルクを飲ませることは、男性の育児参加の中でも達成感が強いのだという。多少は関わったわが身を振り返っても、いの一番に浮かぶのは授乳である

 手順も懐かしく思いだす。ほ乳瓶に入れた粉ミルクを熱湯で溶かし、流水で人肌程度にまで冷ます。温度はなかなか下がらない。飲ませたあとは、洗った瓶を煮沸する

 雑菌対策と分かっていても、手間の多さに難儀したものだ。18年がたち、国内で乳児用液体ミルクの製造、販売が始まった。そりゃあいいと手を打った方は多かろう

 普及して久しい欧米ではスーパーで売られているほど。日本は衛生面を理由に製造も販売もできなかった。契機は3年前の熊本地震。海外からの支援物資で注目され、子育て世代の声が国やメーカーを突き動かした

 粉ミルクより3倍ほど高値だが、非常用に備蓄する自治体も相次いでいるそうだ。国は「男性の育児参加の促進も期待」。イクメンを増やす即効薬になりそうな兆しである。